華麗なるスパイ第六話

日本テレビ系。土曜ドラマ華麗なるスパイ」。第六話。
脚本:君塚良一。演出:大谷太郎
鎧井京介(長瀬智也)が、幼少時に抱いた寂しさを語った。家を留守にした母が二度とは戻って来なかったという彼の体験は極めて特殊であるとしても、似た感覚を抱いたことのある人は少なくないのではないだろうか。帰りを待ってくれる者なんて誰もいないのが当たり前の自宅へ一人で帰宅して親の帰りを寂しく待ち続けなければならない子どもたちの存在は、昔「カギッコ」と呼ばれて、社会現象にさえなったかと思う。
孤独は少年をどのように育てるのか?という問題を扱った近年のドラマ作品としては、例えば、二〇〇五年放送の「仮面ライダー響鬼」後半における桐矢京介(中村優一)の物語を挙げることができるかもしれない。しかし彼の母は留守ではあっても行方不明ではないし、連絡が取れないわけでもない。彼の寂しさは往年の「カギッコ」そのものだ。
桐矢ならぬ鎧井京介は違う。彼は、一人で留守を守る「カギッコ」の寂しさを散々味わった挙句、捨てられた絶望感をも突き付けられたのだ。想像を絶する寂しさと悲しさであるだろう。でも反面、それは「カギッコ」の延長上にあるとも云えなくもない。捨てられたかのような気がしてしまう幼い恐怖感が、現実のものとなるかどうかの、紙一重の違いがあるに過ぎない。彼の感情が視聴者にとって何程か想像できるものであり得るとすれば、それは「カギッコ」としての彼の姿のゆえであるだろう。