赤鼻のセンセイ第十話=最終回

日本テレビ系、ドラマ「赤鼻のセンセイ」。第十話=最終回。
脚本:高梨一起。主題歌:原由子夢をアリガトウ」。音楽:中塚武。チーフプロデューサー:櫨山裕子。プロデューサー:大倉寛子&秋元孝之。制作協力:オフィスクレッシェンド。演出:佐久間紀佳
不幸な要素がない幸福な結末だったが、気になる点がある。二点、考えてみよう。
(一)卒業式の時期の問題。
八重樫守(神木隆之介)は目出度く退院できることに決まった。しかし彼は、同じ病室の隣人として永く一緒に過ごした和田雅樹(須賀健太)が苦しい闘病を続けていた中、新たな病院経営者の意向により一ヶ月後に予定されている院内学級の閉鎖のときまでは、できれば病院内に留まって、院内学級で生徒として過ごしたいとの願望を述べていた。ところで、この院内学級には、退院を卒業に見立て、退院してゆく児童生徒に卒業証書を授与するという慣例があった。当然、八重樫にも退院時には卒業証書が渡される予定だったが、実際には、院内学級の閉鎖がそのとき在籍していた(そして八重樫以外は退院できるわけでもない)児童生徒全員の卒業式として挙行されたとき、八重樫への卒業証書の授与も行われた。しかもこの時点で彼が未だ退院していなかったのは明らかだ。
さて、これはどういうことか。彼は退院を一ヶ月も延期したのか。それとも院内学級の本当の閉鎖よりも一ヶ月も前に、あの卒業式という名の閉校式を挙行したのか。後者である可能性が高いが、そうであれば、何とも奇妙な卒業式であると云わざるを得ない。とはいえ、まさか閉校自体を一ヶ月前倒しての卒業式だったはずはない。この謎は解き難い。
(二)病院長の交替の逆転に伴う処理の問題。
結局、院内学級は存続することに決まった。現在の病院長の桜山真(上川隆也)が、米国から帰国して間もなく新たな病院長に就任する予定だった兄を退け、自ら病院長に留任することで、院内学級の存続を可能にしたのだ。もっとも、そもそも院内学級を設置したのは彼等兄弟の父にあたる前病院長の桜山耕造(神山繁)であり、今回の人事も彼の発案によるものだった以上は、院内学級の存続を訴える弟の留任を認めて閉鎖を主張する兄を退けるのは充分に予想できた展開ではあった。この逆転劇は必然の結果だ。
しかし劇中に明らかにされなかったのは、新たな病院長に就任できなかった兄はどう扱われたのか?ということだ。米国に再び渡ったらしいが、それは父の耕造が決めたことだろうか。それとも兄が自ら選んだことだろうか。恐らくは後者だろう。父が弟を病院長に留任することを決め、従って兄を迎え入れないことを決めた瞬間、兄は米国での学究生活へ戻ることを自ら決意したことだろう。そしてそれは決して納得ゆかない人事ではなかったろうと思われる。なぜなら弟はもともとは病院長として働くことを嫌がっていたのであり、兄が米国での研究活動を切り上げて帰国して新たな病院長に就任しようとしていたのも、実のところは、弟を病院長の重責から早く解放してやるためのことだったろうと見られるからだ。