オルトロスの犬第七話

TBS系。金曜ドラマオルトロスの犬」。第七話。
面白かったのは閣僚たちの会議の場面。出席の閣僚たちの人数の極端な少なさから考えて、これは密談とも云うべきか、恐らくは公式の会議ではなさそうだ。内閣総理大臣大和田伸也)は決断力を欠いて無能だが、少なくとも保身には長けていると見受ける。内閣官房長官北見敏之)は次期内閣総理大臣の座をめぐり社会厚生大臣の榊遥子(高畑淳子)と権力闘争中とのこと。法務大臣西田健)は榊社会厚生大臣に密かに助言をしていたが、果たして味方であるのか、それとも暴走を促して失脚させたかったのか。
竜崎臣司(滝沢秀明)が、いかなる病でも怪我でも数秒間で完全に治してしまう自身の「神の手」(ゴッドハンド)の威力を広く世間に見せ付けたことは、社会に深刻な大混乱を生じた。病や怪我に悩まされている多くの人々がその力によって救われたいと願望し、また医療機関の無能力振りに苛立ち始めたからだ。「そんなことあるわけないだろ!」と思ってはならない。実際、病を治すと自称する超能力者の類は世界各地に時々現れては世間の話題にもなるが、それが社会に大混乱を生じることはない。でも、このドラマではそれを前提しているのだ。
そもそもドラマ作品というものは(アリストテレースが述べるように)現実とは異なることをあたかも異世界における現実であるかのように描いてみせるものなのだ。ゆえに大概のドラマでは現実には通常ないようなことを設定中に幾らか何程かは含有するものではあるのだが、偶々この「オルトロスの犬」では、その種の「設定」がドラマ本体の流れをも侵食する程に余りにも多過ぎて現実世界から乖離し過ぎているだけなのだ。