NHKブラタモリ第二回=上野

NHK総合ブラタモリ」。第二回目の旅先は「上野」。
もちろん面白かったが、これは「東台」上野を歩くからこその面白さだったと云うべきであるかもしれない。江戸城の鬼門を守る上野は、云わば江戸東京の歴史を象徴する空間であり、史的な視点からここを取り上げて面白くならないはずがないのだ。タモリならではの見方も出しにくい場所だったろう。それでも、東叡山寛永寺の浦井正明執事長と一緒に歩くタモリを見て観光客が反応するところは面白かったし、東台の歴史を知り尽くした歴史家としての顔も持つ浦井執事長の上野案内は興味深かった。坂道に関するタモリの薀蓄が披露された点にはタモリ番組の特色が見えたろう。
気になったのは、博物館の集積地としての上野恩賜公園における博物館の代表格として番組が取り上げたのが、どういうわけか国立科学博物館だったことだ。何と見当違いなことか。上野の博物館といえば何よりも第一に、東京国立博物館でなければならないはずだ。
もともと博物館なんか一軒もあるはずもなかった東叡山寛永寺の焼失後の広大な跡地に、大日本国の威信をかけた大博物館を建設することを決意したのは町田久成の提言を受け容れた大久保利通であり、彼の没後は盟友の岩倉具視や配下の大隈重信がその意思を継いだ。東京国立博物館の成立には文部省のみならず農商務省内務省、そして宮内省と皇室までもが深く関与していて、上野の近代史は東京国立博物館の歴史であると同時に、それは日本の近代史の縮図でさえある。上野公園とは、東京国立博物館の場所に他ならぬと云うも過言ではない。これに対し、国立科学博物館にはそんな華麗な歴史はない。もともとが文部省の(町田久成には相手にしてもらえなかった)教育資料を展示する教育施設であり、一時期は、昌平坂学問所を継承する東京高等師範学校(今の筑波大学)の付属機関「東京教育博物館」として御茶ノ水湯島聖堂に居候していたこともある程で、要するに、上野恩賜公園の歴史においては一脇役でしかない。主役は東京国立博物館でしかあり得ない。それなのに!この番組はそうした歴史を全く理解していないかのような映像の編集をしていたのだから呆れる。