ルーヴル美術館がエジプト政府に盗品の返還を検討するの記事について

かなり誤解を招きかねない報道が出た。Yahooニュースで本日配信された「ルーブル美術館、「盗品」展示=エジプトが協力停止発表」という記事のことだ。これによると、エジプト中部ルクソールの「王家の谷」の墓からの盗品をフランス国立ルーヴル美術館が盗品と知りながら購入していたらしく、エジプト考古学会の重鎮ザヒ・ハワースがこれに抗議したところ、ルーヴル美術館は返還を検討しているとのこと。これを読んで、「おお!ついに欧米の列強が強奪した美術品を元の持ち主に返還するのか?」と誤解する人々もいるかもしれないが、多分そういうことにはならない。ルーヴル美術館が返還しようとしているのはあくまでも比較的近年に購入した「盗品」のことであって、ナポレオン時代にまで遡ることは考えていないはずだ。ルーヴル美術館大英博物館古代ギリシア美術や古代エジプト美術の遺産は、欧米列強の大美術館(「普遍的美術館」)の生命線であり、ギリシア政府やエジプト政府からどんなに正当な抗議を受けようとも断じて譲らないに相違ない。
記事の全文「10月7日21時56分配信【パリ時事通信】エジプト考古最高評議会のザヒ・ハワス事務局長は7日、パリのルーブル美術館に、盗まれた古代エジプトの展示品があるとして「盗品が返還されるまでルーブルとの協力を一切停止する」と発表した。AFP通信が伝えた。/エジプト側が返還を求めているのは、同国中部ルクソールの「王家の谷」の墓から盗まれた複数のステラ(石碑)。ハワス氏によると、ルーブルはこれらを盗品と知りながら購入していたという。/同美術館は返還の用意があると表明、フランス政府当局の決定を待っているとしている」。