仮面ライダーW(ダブル)第七話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第七話「Cを探せ/フィリップはそれを我慢できない」。
脚本:荒川稔久。監督:田崎竜太
行動する「ハードボイルド」気取りの、しかし現実には「ハーフボイルド」=「半熟」止まりの探偵青年、左翔太郎(桐山漣)と、地球上のあらゆる知を脳内に蔵してそれを検索することのできる「超天才少年」の、彼の相棒フィリップ(菅田将暉)。二人で一人の仮面ライダーWに変身する「二人で一人の探偵」は最強の二人組ではあるが、その最大の弱点が「二人で一人」である点にこそあるのも明らかだ。仮面ライダーに変身している間、フィリップの身体は抜け殻になるので、その安全を確保しなければならないという問題は第一話で明かされたし、また、戦闘中にフィリップが何か別のことに気を取られたり、気を失ったりしてしまった場合、たとえ翔太郎が正気でも、彼だけの判断では仮面ライダーの身体を動かすことができないという問題は第三話でも既に明かされていた。まさしく「一人じゃ駄目」なのだ。
この「一人じゃ駄目」ということが今朝の話を(探偵の側も、事件の当事者の側も)貫いた。
今朝の第七話でも、フィリップが、翔太郎が追っている事件とは全く関係ないこと(のように見えていたこと)に私的に夢中になってしまい、そのために別行動にまでも走ってしまったことが、翔太郎だけではなくフィリップ自身と鳴海亜樹子(山本ひかる)をも危機に陥らせた。
第三話&第四話におけるフィリップが、失われた自身の過去の記憶に関連する特定のキーワード(「我が家」「家族」)に直面したとき正気を失っていたのに対し、今朝の第七話におけるフィリップは、未知の領域への強烈な好奇心に駆り立てられて、他のことには見向きもしない状態と化し、仮面ライダーとしての戦闘にさえも集中できなくなってしまっていた。「何かにのめり込んだときのフィリップ」の強烈な探究心を、誰も止めることができないことは既に第一話において印象深く描かれていた。今回のような困難の事態は、予想できたことだったのだ。
とはいえ、翔太郎が追っていた事件と、フィリップが探求していた謎は一つに繋がった。最悪の危機を彼等が乗り越える可能性は既に見えている。偶然だろうか。否、そもそもフィリップがどうして「カリスマ高校生ダンサー」の稲本弾吾(森崎ウィン)の技「ヘヴンズトルネイド」なんかに唐突に興味を持ったのか?と考えるなら、このキーワードをめぐって世界に異変が生じていることを脳内で察知したからではないか?と想像してみてもよいはずだ。この想像には傍証がある。なにしろ彼の「検索」の威力は凄まじいからだ。何時、何処の道路にどのような車が走ってくるかをも瞬時に脳内の「地球」から検出できる程であるのだ。彼は、翔太郎の「相棒」として真に探求すべきことを(それとは知らずに)探求していたと云えるのではないのだろうか。
今回の事件の、謎の依頼人が、事件の舞台となった風花高等学校(かぜはなこうとうがっこう)の学校裏サイト掲示板に星野千鶴(藤井玲奈)の悪口を書いた張本人であり、それが稲本弾吾に他ならないことは明白だ。その掲示板に特定の人物の悪口を書くことが、風都のヒーロー「ゴキスター」を自称するコックローチドーパントによるその人物への制裁=「害虫駆除」を誘発することを、彼は書いた時点では確とは認識していなかったのだろう。
それにしても、自称ヒーローのゴキスターは、ヒーローになるために選りにも選ってコックローチのガイアメモリを購入するとは、なかなか大胆な選択ではある。思うに、余りにも人気が薄くて売れなかった所為で他のガイアメモリよりも格段に値段が安くなっていたのだろうか。とはいえゴキスターの動作の速さは馬鹿にはできない。「屈折」しているらしい購入者は、その辺の不気味な性能をむしろ積極的に気に入って敢えて選択したのかもしれない。
他方、秘密結社ミュージアムでは、幹部の一員としての飼い猫ミックが大活躍を見せた。フィリップが健在であることを突き止めた上、スミロドンドーパントに変身して標的のフィリップを追い詰めた。そして猫にも劣ると判定された惨めな園咲霧彦(君沢ユウキ)。義父の園咲琉兵衛(寺田農)から「霧彦君、君もミックに負けないようにな」と云われたとき、当の霧彦は義父等の会話を盗み聞いていたところだった。前回の仮面ライダー相手の戦闘で負けたことがこの婿殿の立場を弱くしていたのだろうが、その不安のゆえにか盗み聞きをしていたのを、しかも完全に見破られていたことが、ますます霧彦を惨めに見せている。彼に挽回の機会はあるのか。
風都警察署の刃野幹夫(なだぎ武)と真倉俊(中川真吾)は今回それぞれ芸達者な一面を垣間見せた。刃野刑事は狂言の真似を途中まで披露し、「ナマクラさん」こと真倉刑事はバネのように飛び上がって真直ぐに立ち上がる運動能力を発揮した。フィリップと鳴海亜樹子所長の名コンビ振りも定着してきた。前回「おじさん」呼ばわりをされて傷付いていた翔太郎も今回は旧知の高校生に「大きくなったな!」と声をかける堂々たるオジサン振り。でも、高校生から見れば二十歳を過ぎれば既にオジサンなのかもしれぬ。