仮面ライダーW(ダブル)第十六話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第十六話「Fの残光/相棒をとりもどせ」。脚本:三条陸。監督:柴崎貴行。
この物語は二週間にわたり放映される二回の話を一つの話とすることで進行する。昨年十二月二十日に放映された第十五話の話の後編として今朝の第十六話があるのであり、第十五話と第十六話を切り離して見ることはできないが、前編は年末、後編は年始に放送されたばかりか、その間には年末の特別番組の放送に伴う休止があって二週間もの間隔があった。しかるにこのことは予想外に有効だったのかもしれない。なぜなら今朝の第十六話が描いた「相棒」への愛の物語は最も端的に「仮面ライダーW」の面白さを表現し得て、実に、新年を彩るに相応しかったからに他ならない。
ハードボイルドを気取る冴えない探偵青年、左翔太郎(桐山漣)は、「おやっさんから託された大切な相棒」の天才少年フィリップ(菅田将暉)を逃がすため、そして「おやっさん」の娘である鳴海亜樹子(山本ひかる)を苦痛から解放してやるため、自分自身を犠牲にしようとした。しかし鳴海亜樹子はどんな苦痛に耐えてでも翔太郎を死なせるわけにはゆかないと覚悟していた。そして何といっても、フィリップ=来人は、「僕が僕でなくなる」という危険を冒してでも翔太郎を救出しなければならないと決意した上で、ファングを伴って翔太郎を救出した。
そのときフィリップは「地獄の底まで悪魔と相乗りしてくれ、翔太郎!」と呼びかけたが、このことの前提としてフィリップも今回、翔太郎の生来の理屈を超えた無謀な行動力に相乗りすることを決意している。フィリップが翔太郎を引き受け、翔太郎もフィリップを引き受けること、要するに「二人で一人の仮面ライダー」であることの誓いを、フィリップは翔太郎に改めて求めた。だから翔太郎は、「地球の本棚」の炎上する中で自分自身を見失う恐怖に怯えていたフィリップを助け出し抱き起こして、期待に応じることを誓った。
フィリップがファングを用いて仮面ライダーWに変身するとき、普段とは逆に、翔太郎の身体が抜け殻になるのは映画「ビギンズナイト」で既に描かれている。テレヴィドラマ「仮面ライダーW」は、たとえ映画版「ビギンズナイト」(映画「仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイドMOVIE大戦2010」第二部)を見ていなくとも楽しめるように造られてはいるが、映画版を見れば何倍も楽しめることだろう。特に第十五話と第十六話についてはそう云える。
仮面ライダーWからの攻撃をかわし切れず捕らえられそうになっていたビギンズナイトの怪人タブードーパント=園咲冴子(生井亜実)をナスカドーパント=園咲霧彦(君沢ユウキ)が無事に救出したのも、敵の側における愛の確認の話に他ならない。彼が時々職場から姿を消していたのは、浮気なんかでは断じてなく、逆に、妻を今回のような危機から救うための力を身に付けるための訓練を密かに続けていたからだったのだ。