仮面ライダーW(ダブル)第三十三話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第三十三話「Yの悲劇/きのうを探す女」。
脚本:中島かずき。監督:石田秀範。
左翔太郎(桐山漣)がフィリップ(菅田将暉)と完全な一体化を果たした直後、翔太郎は今度は「不破夕子」と名乗る謎の依頼人(平田薫)に魅了されて、妙に気取ってみせつつも、依頼人のためには街中で猫の物真似をしながら猫を探すことでもできてしまえる状態。鳴海亜樹子(山本ひかる)は「色気付いたか、あのハーフボイルド!」と怒っていたが、そんな色気付いた翔太郎と焦る亜樹子の様子を見てフィリップは楽しそうだった。
このところ何だか妙に貫禄を増してきたフィリップ。
これと好対照をなすのが、翌日の同時刻、風都警察署の照井竜(木ノ本嶺浩)が捜査の協力を求めて鳴海探偵事務所を訪ねてきた場面。色気付いて以降、普段よりも頼りなくなってしまっている翔太郎のことを亜樹子が心配している中、照井竜は「左には期待していない。借りたいのはフィリップの頭脳だけだ」と冷徹に云い放った。もちろん翔太郎は「何だと?コラア!」と何時ものように反発したが、椅子に座したまま。殴りかかろうとはしなかった。普段とは少しだけ違う気がする。そして亜樹子が入れた珈琲の味についてフィリップが盛り上がり、また照井竜が持ち込んだ事件について皆で語り合っていた間も、翔太郎は何だか物思いに耽っているのか、沈んだ様子だった。片想いの女のことしか頭になかったのだろうが、それとも案外、頼りにされていないことに落ち込んでいるのか?とさえ見えなくもなかった。
やがてイエスタデイドーパントによる「刻印」が作動して彼は文字通り二十四時間前と全く同じ言動を取り始めるわけだが、不破夕子に対する翔太郎の言動と照井竜に対する翔太郎の言動が全く同一であることによる昨日と今日との対比に先立って、その前段階とでも云えようか、元気だった昨日と落ち込んでいる今日との対比があったと云えるかもしれない。
それにしても、翔太郎が亡き須藤霧彦(君沢ユウキ)の思い出を語るのを聴いて、不破夕子=須藤雪絵(平田薫)は何を感じたことだろうか。霧彦のあの血染めのスカーフは、風都の心地よい風に吹かれて妹のもとへ届いていたのか。「困ったことがあれば鳴海探偵事務所に行け」と助言した「知り合い」とは兄の霧彦その人に相違なかろう。翔太郎が「この街をとても愛していた男」として須藤霧彦への思いを語ったとき、不破夕子=須藤雪絵が一瞬だけ見せた表情と、そんな翔太郎を利用して騒動を惹き起こしたこととの関連をどう見るべきだろうか。
今回の風都ホールにおける騒動によって、街のヒーローとして愛されていた仮面ライダーWの評判は一気に落ちることになりはしないか。心配だ。
他方、園咲家では、園咲若菜(飛鳥凛)が、先の「エクストリーム」覚醒に関して父=園咲琉兵衛(寺田農)が云っていたことの意味を考え始めていた。彼の後継者として育てられてきたはずの長女=園咲冴子(生井亜実)ではなく次女の若菜に、「ミュージアムの未来」を見せたのは何故か?その意味が、恐らくは冴子の裏切りに父が気付いてしまったことにあるかもしれないことを、吾等視聴者は感じている。いよいよ園咲家に内乱が生じるのだろうか。