ザ少年倶楽部七月第一回におけるジュニアコロシアム

七月二日の夕方六時からの五十分間、NHK衛星第二で放送された月二度の番組「ザ少年倶楽部」。今月の第一回。録画しておいたのを見たが、今回も、アイドル候補生が各種エンタテインメントの技を競い合う「ジュニアコロシアム」が余りにも面白かった。ゆえに全体の感想文を後日に回すことにして今日は「ジュニアコロシアム」のみについて。
今回の「ジュニアコロシアム」では、「ジャニーズ・ジェスチャー2010」の題の下、ジャニーズのアイドルに因んだ題をジェスチャーで表現して、その題を解読した。出場者は全十二人だが、三人で一軍を構成し、四軍がトーナメント形式で対抗し優勝を争う形式を採った。各軍三人中、一人が与えられた題をジェスチャーで表現して、他の二人がそれを読み解き、正解を得ればジェスチャーをやる役を交替して別の題で同じように表現と読解を行い、正解を得れば交替して…というのを繰り返して、制限時間内にどれだけ多くの正解を得られるかで優劣が決められた。第一回戦ではジャニーズの歴代アイドルが歌い踊った楽曲(例えば滝沢秀明「愛・革命」とか)を題として与え、第二回戦ではジャニーズのアイドル及び候補生の名(例えば亀梨和也とか)を題として与えてそれを表現させた。表現する側も解読する側も、ジャニーズに関する知識の程を試されてしまうわけで、出場者たちが皆ジャニーズJr.というアイドル修行中の少年たちであることを考えるなら、なかなか怖い「試験問題」ではある。知識の不足のゆえに表現できない場合もあれば解読できない場合もあるが、題そのものを拒否する所謂「パス」の権利は一回戦中一回しか与えられていない。それが悲劇の喜劇を生んだ。
出場者の顔触れを記しておこう。Aブロック。藤ヶ谷軍として藤ヶ谷太輔、千賀健永、高地優吾。対する戸塚軍として戸塚祥太中島健人、真田佑馬。Bブロック。玉森軍として玉森裕太、五関晃一、菊池風磨。河合軍として河合郁人、伊郷アクン、増田良。こうして見ると、戸塚軍は中島健人にしても真田佑馬にしても負けず嫌いで闘う気満々で、抜きん出ていたのかもしれない。結果を先に書けば第一回戦Aブロックでは接戦を制して戸塚軍が勝利、Bブロックでは河合軍の前代未聞の大失態により玉森軍の勝利、そして第二回戦で戸塚軍が優勝した。各軍それぞれ面白かったが、戸塚軍には三人三様のファインプレイが多かったので実に納得の結果と云える。
笑えた箇所は数々あったが、それらを着実に拾い上げた小山慶一郎と中丸雄一の役割も大きかった。もちろん両名は司会進行役。なお、出題の助手をつとめたのは安井謙太郎だったろうか。
実のところ、この「ジュニアコロシアム」を最初から最後まで笑い所満載なものに仕上げた一番の決め手は、第一回戦Aブロックの冒頭、ジェスチャーをやるべく登壇した高地優吾を見て小山慶一郎が「天才高地君じゃないですか」と云ったとき高地優吾が普通に「はい」と応えてしまったところにあったような気がする。ダチョウ倶楽部であれば「ツカミはOK」と云うだろう。
第一回戦Aブロック、戸塚軍。中島健人が表現した「仮面舞踏会」は実に的確だったし、真田佑馬の「らいおんハート」も解り易かったが、前者は正解までに少々時間を要し、後者は正解が出ないまま「パス」権の使用に至ったのが惜しかった。その分、戸塚祥太の「ワッハッハー」と中島健人の「ダメ」は簡単に表現できて簡単に正解できる問題だったのが有利に働いたことは間違いない。続く真田佑馬の「恋のABO」、戸塚祥太の「約束」で立て続けに直ぐに正解を得られたのは、表現する側も解答する側も、ともに普段の勉強の程が物を云ったと云ってよいだろうか。ここで最も印象深かったのは、「仮面舞踏会」で無事に正解を導き得た直後の中島健人の、あたかも男子体操選手が着地を決めたときのような、見事な決めのポーズ。
第一回戦Bブロック、玉森軍。菊池風磨の「乾杯」では、祝杯を上げるグラスを持っているかのような振りの右手を前方に高く掲げているとき、左手が後方に伸ばされていたのが妙に愛らしかった。これで直ぐに正解が出て幸先はよかったが、五関晃一が「愛・革命」を延々確り踊ってみせたにもかかわらず結局は正解の出ないまま「パス」をされてしまっていて気の毒だった。
そして最大の笑い所があったのが第一回戦Bブロックの河合軍。先ずは河合郁人が満面のアイドル笑顔で「急☆上☆Show!!」を表現したが、誰にも全く伝わらず、中丸雄一からは「河合君、思ってる程は伝わってませんよ」との的確なツッコミを入れられていた。この空回り振りが傑作だったが、それを拾い上げた中丸雄一の功も大きい。ともかくもこれで正解が出ないまま「パス」権を使用してしまったのが致命的だった。伊郷アクンは普段はQuestion?というバンドでギターをやっているから、ジャニーズらしくダンスをする機会がそもそもないのだろうか、「喜びの歌」という題を見せられた時点で既に困っていて、辛うじて考え出したジェスチャーも全く理解されず、小山慶一郎からは「何それ?もうパスできないから」と云われ、解答者の増田良は苦笑い顔のまま凍りつき、河合郁人は混乱の表情で「何?何?」と訊ね、彼等の背後でも、初めは笑顔だった真田佑馬もやがて中島健人と一緒に真剣に考え込み、中丸雄一は「別の方法で!」と助言をしたが、表現の術をなくして困り果てた伊郷アクンが遂に動作を止めて立ち尽くす以外なくなってしまった瞬間、中丸雄一はそれを「放送事故」と云った。これは大いに笑える場面ではあったが、出場したアイドル候補生たちにとっては決して他人事ではないと思われたのだろうか、焦る場面でもあったようで、小山慶一郎からのヒントの甲斐もあって河合郁人が何とか最後に正解をした瞬間、背後の中島健人と真田佑馬が安堵したように爆笑していたのが、さり気なく印象深い。
でも、この正解の瞬間に時間切れ。二問の題で、一問は「パス」、一問の正解。増田良には一度も出る幕がなかった。でも、顔立は確りしているのに声が意外に繊細な感じの増田良の「やらずに終わっちゃって」という言葉も耳に残るし、伊郷アクンと河合郁人から「マッスー、ごめん」と謝られて頷いていたところも一寸よい感じだった。
第二回戦、先ずは玉森軍。菊池風磨は「山下智久」や「丸山隆平」の名を表現するにあたり、云わば北野武の「コマネチ!」を頭上でやるみたいな感じで、両手で「山」の字や「下」の字や「丸」の字を形作っていて、その必死な動作が妙に面白かった。五関晃一は平成ジャンプのダンスを真似たあと、天を指差して高さを表現した。菊池風磨はダンスを見て「山田涼介」と読み、天空を指す手の方角を見て「上田竜也」と読んだのち、両要素を総合して見事「中島裕翔」という正解を導き出した。
第二回戦、戸塚軍。中島健人は「亀梨和也」をかの「Real Face」の「舌打」で表現。彼は今でも赤西仁ファンだが、「舌打」が今は亀梨の役割であることを弁えているのが一寸泣かせる。でも満面の輝くアイドル笑顔で「舌打」の動作を何度も繰り返していたのが面白くて笑えた。真田佑馬は、手が天空を高く飛んで山を越えてゆくかのような動作で「手越祐也」を表現。手越祐也といえば、顔の前に手をかざして五指の間から顔を覗かせ、まさしく「手ごし」に顔を見せたあと、その手を除けて「テゴシです!」と発声するという堂本剛伝授の決めポーズがあるので、小山慶一郎は真田佑馬にそれを気付かせるべく「あるじゃん!もっとあるじゃん!」と幾度も呼びかけていたが、結局、真田佑馬独自の動作で戸塚祥太が見事正解。戸塚祥太は両手で変な前髪と変な後ろ髪を表現し、中島健人が直ぐに「藤ヶ谷君!」と当てた。中島健人は、舞台上にスポットライトを浴びて恍惚の表情でポーズを決めるダンサーのような姿を演じ、真田佑馬は瞬時に「今井翼君!」と当てた。この日一番のファインプレイだと思う。真田佑馬の「塚田僚一」も傑作だった。元気に飛び跳ねる動作のあと、汗の流れる顔に手で風を送って熱を冷ますような仕草をしたところで、戸塚祥太が「塚ちゃん?」と気付いた。ファインプレイの連続と云えよう。でも最後の六問目、戸塚祥太は背後にエビゾリに仰け反るような動作をし始め、中島健人も思わず「マトリックス!」と云っていた。あれで「上田竜也」と当てるのは流石に難しかろう(上田竜也の楽曲にああいうダンスもあるのだろうか?)。こうして玉森軍の三問正解に対し戸塚軍は五問正解で、戸塚軍の優勝が決まった。
玉森軍では三問正解中の二問までもが菊池風磨ジェスチャーだったのに対し、戸塚軍では三人とも各々ファインプレイを見せたこと、ティームワークが抜群だったことが優劣を分けたのかもしれない。私的には、中島健人と真田佑馬が仲よく楽しそうにやっていたのが好ましかった。