仮面ライダーW第四十五話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第四十五話「Kが求めたもの/悪魔のしっぽ」。
脚本:三条陸。監督:諸田敏。
秘密結社ミュージアム園咲家の総帥、「恐怖の帝王」こと園咲琉兵衛(寺田農)は、左翔太郎(桐山漣)と照井竜(木ノ本嶺浩)に対し、「左翔太郎君」、「園咲文音、いや、シュラウドの操り人形君」と挨拶し、また、フィリップ=園咲來人(菅田将暉)に対しては「おまえは死んだのだ。十二年前にな」と語りかけた。フィリップ=園咲來人に対する園咲琉兵衛の語の意味については次週以降の物語が物語ることだろう。
左翔太郎に対する園咲琉兵衛の語は、圧倒的な優位性から来る奇妙な親愛の情のようなものさえも感じさせるかもしれない。考えてみれば、園咲琉兵衛は用意周到に時間をかけて左翔太郎の内面に己への恐怖心を植え付けていたわけで、その慎重な計画性は、平凡な青年に過ぎないはずの左翔太郎が街と人への愛情のゆえに起こし続けてきた奇跡の数々への、感服の混じった警戒感の表れと見ることができるかもしれない。
問題を孕んでいるのは照井竜に対する語だ。照井竜は、左翔太郎とは違い、「恐怖の帝王」=園咲琉兵衛からの恐怖の情念による攻撃を撥ね退ける特異な体質の持ち主であり、その限りでは、左翔太郎よりも照井竜の方が手強い相手であるはずだ。シュラウド=園咲文音(声:幸田直子)も照井竜のその才能を見込んだからこそ、一般人に過ぎない左翔太郎を退けて照井竜を園咲來人の新たな真の友にしようとしたのだ。それでは「シュラウドの操り人形君」という極めて失礼な言はどう解されるべきか。
もちろん文字通りに受け取るべきだろうが、この場合、シュラウドに関する一つの疑惑を再燃させざるを得なくなる。照井竜の家族を殺害して彼を不幸にした事件の黒幕は、やはりシュラウドではないのか?という疑惑に他ならない。そもそも園咲家の一員でもないにもかかわらず「恐怖の帝王」の攻撃に耐えることのできる特異な体質を備えているというのは極めて稀なことであるはずで、そうした稀な天才が偶々あのような不幸に見舞われて復讐鬼としての仮面ライダーアクセルに変身するに至ったというのは、いくら何でも出来過ぎた話だ。シュラウドが、自身の見出した人材を復讐鬼に仕立て上げるべく、一連の出来事を仕組んだとでも解する以外ないのではないか。
左翔太郎を徒に凡庸に見せてしまう程にも卓絶した能力や体質、云わば人間離れした神の如き能力や体質をなぜ照井竜が備えているのかについて、ドラマ内部の論理において納得ゆくだけの解明がなされない限り、シュラウドの犯罪を疑わないわけにはゆかない。