ホタルノヒカリ2第九話

日本テレビ系。水曜ドラマ「ホタルノヒカリ2」。第九話。
雨宮蛍(綾瀬はるか)を叱りつけるとき高野誠一(藤木直人)は今までは「アホ宮」という呼び名を用いてきたが、今宵の第九話の最後、「アホタル」という呼び名を用いた。今宵の話から新たに出てきた要素だろう。
ところで、このことの他に何か新たな展開が今宵の話にあったろうか。瀬乃和馬(向井理)が、雨宮蛍を高野誠一から奪い取る可能性の皆無に近いらしいことをあっさり認めて、それを雨宮蛍の前でも表明したということが挙げられるかもしれない。似たような敗北宣言は既にあったような気もするが、雨宮蛍の前でもそれを宣言したことは今までになかったかと記憶する。なぜ彼は唐突に略奪を諦めるに至ったのだろうか。諦めるに足る事情はもともとあったはずで、それでも諦めなかった彼の心境を急に変えるに足る事情の変転が何かあったろうか。記憶にない。
この変化とあたかも対をなすかのように、高野誠一も、雨宮蛍が瀬乃和馬と一緒に仲良くしているところを見ても全く動じない心境に達した。この変化には一応それなりの原因はある。雨宮蛍が浅田小夏(木村多江)に宛てて書いた手紙を浅田小夏から見せられたことで、雨宮蛍の本心を再認識したのだ。とはいえ、その手紙に書かれていたことは今まで二人を見舞った幾つもの事件における雨宮蛍の本心である以上、高野誠一はそれをそれぞれの事件の解決を通して既に知っていたのではなかったろうか。
今宵の話の意味は、物語を進めることにあるのではなく、先週までの八話の物語を通して雨宮蛍と高野誠一との間にどのような事件と展開があったかを想起して再評価することにあったと云える。第八話の末には激動の到来を予感させておきながら、第九話の冒頭の時点では既に何の激動もないと判明してしまっていたが、この何とも拍子抜けするような展開の中で、破局の形骸とも云うべきか、わずか数日間の別居生活という状況が設定されたのは、そのような確認作業を可能にする前提としてのことだろう。