橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり第十部第五話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第五話。
時事問題や最新流行をさり気なく、話の邪魔にならない程度に(反面、何の必要もないのに)散りばめながら繰り広げられるこのドラマ。
顧みるなら、例えば、インターネットが流行し始めた頃には、小島家ラーメン店「幸楽」でも公式ホームページを拵えて、ラーメンや炒飯や餃子の出前の注文をメイルで受け付けるという奇妙なサーヴィスを始めていた(物品の通信販売ならぬ食品の出前をインターネットで発注する人がいるのか?とか、今は電話でしか受け付けていないのだろうか?とか、色々気にならないでもないが、問わないでおくべし)。やがてブログがインターネット界を席巻するや、小島家の居候の野々下加津(宇野なおみ)が「チコの日記」と称するブログを拵えて全世界の注目を集めてきた(あれのどこがブログなのか?というのは問わないでおくべし)。
そして、ツイッターというものが世間で話題になっている昨今、このドラマでも何時か誰かの台詞にこの語が登場するだろうこと位は、多分、視聴者の誰もが予想し期待していたことだったろう。小島眞(えなりかずき)辺が「そういえば加津のツイッター見たんだけど」とか何とか云い出す場面が出てくるのではないか?…等と何の根拠もなく予想していたものだった。
しかるに、まさか!小島勇(角野卓造)の妹であり、山下健治(岸田敏志)の妻であり、小島加奈(上戸彩)と小島登(伊藤淳史)の母であり、小島五月(泉ピン子)の狂暴な小姑でもある山下久子(沢田雅美)がこの語に言及することになろうとは、予想外だった。しかも驚くべきかな、小島邦子(東てる美)と山下久子の姉妹はブログやツイッターを一攫千金のための手段として利用できるのではないか?等と夢想していたのだ。
第九部に登場した華麗なる一族、大井家の令娘、大井貴子(清水由紀)は、その第九部の中で父親の会社の倒産に伴う一家の没落と離散の憂き目を見て、ついには婚約相手の小島眞と別れ、父親と二人で新天地を求めて中国へ移住してしまっていたが、それが一転、今宵の第十部第五話では、夜間の工事現場で健気に働く労働者の姿で再登場していた。帰国すべき事情が何かあったに相違ない。しかも、第二話で野々下加津が退場したのを待っていたかのような登場であり、かなりの激動が期待される。
工事現場で働く大井貴子の姿を目撃して大いに動揺していた田口誠(村田雄浩)に、大いに嫉妬して怒り狂わずにはいられなかった田口愛(吉村涼)の、何に怒っているのかも判らなくなってくる程に激越に理不尽な演説の面白さを含め、今宵は小島家とその周辺で事件が多発していたが、不図気付けば今宵このドラマには小島家関係者しか登場しなかったようだ。
前回の話では野田家における野田弥生(長山藍子)と野田佐枝(馬渕英俚可)との抗争に一応の終止符が打たれたし、本間家の移転も無事に完了した。それぞれの家がどこへ向かうのか、新展開が待ち望まれる状況にある。それなのに、野田家や本間家どころか岡倉大吉(宇津井健)の高級料理店「岡倉」さえも一場面も出さないまま、小島家の騒動だけで一話まるごと拵えてしまうなんて法はないだろう。