佐藤健主演Q10第九話=最終回

日本テレビ系。土曜ドラマQ10(キュート)」。第九話=最終回。
二〇八〇年に開発されたロボットQ10前田敦子)をこのまま二〇一〇年に存在し続けさせれば複数の文明が消滅し多くの人命が亡くなる…という了解し難い(そして本来は実証することもできない)命題を、深井平太(佐藤健)にとって受け容れ得るものにするための例え話として、富士野月子=R31(福田麻由子)は、今も世界のどこかで戦争が起きていて、多くの人命が亡くなっていても、それは身近な話ではなく、自分自身の問題として実感することはできないのと同じことだと語った。なかなか凄みがあった。
眼前にないものは存在しないも同然ではあるが、たとえ眼前になくとも確かにそれは存在する。そして一つの存在は他の存在と無縁ではなく、何らかの形で周囲と連動することなくしては存在しないのである以上、存在の無限の連鎖によって、遥か遠方の、直接には決して見えることのないものとさえも連動している。世界に孤島は存在しない(in mundo non esse insula)。
このドラマでは、深井平太の物語と並行して、影山聡(賀来賢人)や河合恵美子(高畑充希)、中尾順(細田よしひこ)、山本民子(蓮佛美沙子)、藤丘誠(柄本時生)、岸本路郎(小野武彦)、小川訪(田中裕二)、小川しげ(白石加代子)、柳栗子(薬師丸ひろ子)、そして久保武彦(池松壮亮)等が、それぞれ様々な組み合わせで、別の物語を繰り広げた。それらの中には深井平太の物語と連動したものもなくはなかったが、多くは無関係に進行した。しかし無関係ではあっても何かしら課題を共有してもいた。そのことこそは、眼前にないものも確かに存在していること、世界に孤独がないことの表現でもあったのかもしれない。
もう一つ見落とせないのは、Q10が七十年後、八十八歳の深井平太から十八歳の深井平太へ送られた伝言でもあったことだ。よい大人を味方に付けて大いに頼りにせよ!という主張が表現されたことや、若者たちには馴染みがなさそうな昭和の流行歌が劇中に執拗なまでに盛んに使用されたこと等も含めて、このドラマが全体として老人から若者への贈る言葉として作られたと考えるなら、極めて納得ゆく作風だったと云えるだろう。