デカワンコ第五話

日本テレビ系。土曜ドラマデカワンコ」。第五話。
今宵のはチャンコ刑事こと和田純(石塚英彦)の話。チャンコが何事にも無表情で笑うことがないのは、純白の愛犬シロが五年間も行方不明になっているからだった。五年前、横浜の大型店で強盗殺人事件が発生したとき、休日に犬の餌を買うため偶々そこに居合わせた彼は犯人に自家用車を盗まれた。やがて車は乗り捨てられていたのを発見され、戻ってきたが、車に乗せたままだった愛犬シロは戻ってこなかった。以来、彼は愛犬シロを見付け出すためにも、何としても犯人を捕まえたいと決意していた。
そうした中、犯人の植木清(瀬川亮)の兄にあたる噺家、北風亭太陽(柳家花緑)が真打に昇進したことから、犯人は金の無心のため兄に連絡を取ってくる可能性があると睨んだチャンコは浅草の寄席「木馬亭」に毎日のように通い、北風亭太陽の落語を無表情のまま聞いていたのだ。
逮捕された極悪非道の犯人は取調室で、鳴いていたシロを無残にも逃走中の車の窓から投げ捨てたことを笑いながら明かした。
こうして話の後半は、チャンコの同僚である警視庁刑事部捜査一課の第八強行犯捜査の殺人捜査第十三係の新人、ワンコ刑事、否、デカワンコこと花森一子(多部未華子)がシロを見付け出し、チャンコに立ち直ってもらうまでのドラマを描いた。シロの発見にあたってはもちろん警察犬ミッハイルことミハイル・フォン・アルト・オッペンバウア・ゾーン(シェーンことフィトス・オブ・セイント・フジ・ジュニア)と刑事部鑑識課警察犬係巡査部長の田村和正(田口トモロヲ)の協力を得た。
この話で秀逸だったのは、愛犬シロが直ぐには見つかりそうもなくて挫折しそうになっていた中で、チャンコが落語「元犬」の主人公「四郎」のことを思い出したところだろう。白犬のシロが人間に生まれ変わったなら、どこかで再会できるのかもしれない…と弱音をはきながら、チャンコは一緒にシロを探そうとして必死になってくれるワンコの姿にも白犬の清らかさを感じ、ワンコの前世は白犬だったのではないか?と語った。確かに「真打」を「まうち」と読み間違えてしまうワンコは「四郎」に近いかもしれない。驚く程に無知だが、真実を嗅ぎ取る。そこが信心深い白犬に近いかもしれない。
シロとは再会を果たしたが、シロには新しい飼い主がいた。「太郎」と名付けられていた。チャンコは五年間もシロを大切にしてくれた少年に、シロ=太郎を帰してやらなければならないと考えた。シロは五年前の飼い主をよく憶えていたが、五年間の飼い主にも愛情を持っていた。そして少年も、太郎=シロを手放そうとはしなかったが、チャンコに同情してもいた。
笑いを失っていたチャンコが笑いを取り戻したのは、寄席「木馬亭」で北風亭太陽の「元犬」を聴いたときだった。実に、犬尽くしの一話だった。
次回の第六話では、潜入捜査のためキリ巡査こと桐島竜太(手越祐也)が女装を披露する模様。