仮面ライダーオーズ第三十五話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第三十五話「夢と兄とバースの秘密」。
ユニコーン型ヤミーは夢の破壊者。これは語の多義性の破壊者でもある。将来どうありたいかを表現する場合に用いる「夢」という語は、覚醒しているときに見る進路を云うのであって、寝ているときに見る脳内の混沌としての夢とは別物であり、単に、現在の現実とは異なっているという一つの共通点に基づいて、比喩として同じ語を転用しているに過ぎない。しかるにユニコーン型ヤミーは「夢」という語のそうした多義性、転用性を無視する。「夢」を抱いてその「夢」に向かって現実に頑張っている若者たちの前に表れては、その「夢」を明るみに出して破壊し、消し去って、「夢は寝ているときに見ろ」と捨て台詞を放って去る。「夢」の破壊者であると同時に「夢」という語の破壊者でもあると云うほかない。
この余りにも陰鬱なヤミーを創り出したのは、紫のグリードと化した陰鬱なドクター真木清人神尾佑)。ヤミーはそれを作るグリードに似るのだ。
ところが、このヤミーと仮面ライダーオーズ=火野映司(渡部秀)との戦闘に、なぜかウヴァ(山田悠介)が乱入し、ヤミーに加担した。このヤミーはドクター真木清人のヤミーであり、ドクター真木清人はカザリ(橋本汰斗)の同盟者である以上、このヤミーはウヴァにとっては敵側に属するはずだ。ウヴァから見れば、もちろんオーズは敵だが、別の意味でカザリも敵だからだ。それなのにウヴァがこのヤミーに加勢したのは、オーズが所有しているメズールとガメルのコアメダルを奪取したいからだった。
これまでオーズからもカザリからも攻撃されて追い詰められていたウヴァが、今回は一気に形勢逆転を仕掛けてきた。
その発端は、カザリが幼いロスト=アンク(飛田光里/声=入野自由)をけしかけてウヴァを襲撃し、ウヴァの所有するアンク(三浦涼介)の赤のコアメダル一枚を奪取したことにあった。このところ人間の社会に紛れて巧妙にセルメダルを大量生産し、蓄積することには成功しつつも、それ以上はどうすることもできず、閉塞状況を打開できそうもなく、途方に暮れながら、今日、散歩していたウヴァは、突然の襲撃を受け、敵対するカザリ党の強大化という危機に直面して遂に、眠れるメズールとガメルを復活させる以外に策はないと決意した。自身の所有するメズールとガメルのコアメダルの枚数を丁寧に数え直した上で、メズールに関してはコアメダル一枚の不足、ガメルに関しては二枚の不足があることを確認したウヴァは、不足分を獲得すべくオーズを襲撃することにした。
決意してからのウヴァの行動は迅速で着実、しかも強靭だった。大量のセルメダルで武装した身体能力は火野映司を驚かせた。
ウヴァの大作戦は成功するのか?それとも狡猾なカザリがそれを利用してしまうのか?次週の展開を待望しよう。
伊達明(岩永洋昭)が身体に問題を抱えていて、仮面ライダーバースへの変身がそれに深刻な影響を及ぼしている恐れのあることは、かつて第二十三話で、当時は鴻上生体研究所長として働いていたドクター真木清人から告げられていた。
その秘密が明らかにされた。かつて戦地で「戦う医師」として奔走していたときに受けた弾丸が脳の中に留まっていたのだ。今までは辛うじて無事でいられたようだが、今回、ユニコーン型ヤミーとの戦闘の過程で弾丸が激しく痛み始め、彼の頭脳と全身の機能を妨げた。たとえ普通に生活していたとしても何等かの影響を免れなかったかもしれないが、ドクター真木清人が告げていた通り、バースに変身して激しい戦闘を続けてきたことが影響を深刻化させた面もあったろうか。後藤慎太郎(君嶋麻耶)は伊達明の身体のこの秘密を未だ知らされてはいないが、伊達明の身体に深刻な何事かが生じていることだけは認識したし、間もなく真相を知るに違いない。そのとき彼は何を決意してどう行動するのだろうか。