渡る世間は鬼ばかり第十部第三十話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第三十話。
相手が己に対して何を思っているのかをなかなか判らず、連動して、相手に対して己が本当はどう思っているのかも解らず、不本意にも相手や周囲や自分自身をさえも振り回すような行動に出てしまう五里霧中…というのは、現実の世界の、恋する人々の本当の姿でもあるだろうか。
そう考えるなら、このドラマにおける小島眞(えなりかずき)、大井貴子(清水由紀)、森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])、長谷部まひる(西原亜希)の感情が、視聴者にとって見えにくく読みにくいのは、恋に迷う心の難しさの臨場感に満ちた表現であり得ると評価することも不可能ではない。
ともかくも今宵の話で見えてきたことが二三ある。(1)長谷部まひるは、小島眞に恋人がいないなら、そして自身との交際を小島眞が受け容れてくれるなら、偽装ではなく本当に小島眞と交際してみるのもよいかもしれないと感じているのかもしれない。
そして(2)小島眞は、大井貴子と自身との交際は現在も決して終わったわけではなく継続中であるはずだと信じている反面、もし長谷部まひるが自身との交際を強く望んでくれるなら、そして大井貴子との交際が消滅するようであるなら、長谷部まひるに乗り換えてもよいかもしれないと感じ始めているのかもしれない。
他方、(3)大井貴子は小島眞との交際が既に終了していて復活する可能性もないと強調することにおいて相変わらず頑固ではあるが、小島眞の入院の報に接したときには強く胸を痛めていた様子だった。その表情を見る限り、大井貴子が小島眞との交際の終了を強情なまでに強調するのは、やはり当人が小島眞相手にこれまで幾度も云っていたように、昔とは打って変わった己と父の惨めな現状を踏まえ、小島眞と己との現在の地位の差を弁えるからこそであって、そうした塵に曇らされなければ、小島眞への想いは昔も今も決して変わってはいないのかもしれない。