仮面ライダーオーズ第三十六話
東映「仮面ライダーオーズ/OOO」。
第三十六話「壊れた夢と身体とグリード復活」。
語るに値することが余りにも多くて、とても語り切れない程。ゆえに、わずか三点のみ記して後日のための覚書にしておこう。
(1)後藤慎太郎(君嶋麻耶)は伊達明(岩永洋昭)が身体に抱える健康上の深刻な問題を知って、何とかして彼の生命を守りたいと思っている。
もともと後藤慎太郎は「世界を守りたい」という大きな志(「夢」)を抱いていて、そのために先ずは警察庁に就職し、やがて鴻上財団へ転職して、ライドベンダー隊長をつとめたが、この志は極めて漠然としたものではあった。彼自身もそのために何をどうすればよいのか悩み、迷っていたとき、仮面ライダーバース=伊達明と出会って、以来、伊達明の助手をつとめながら訓練と経験を積んできた。そうした中で彼は、大きな夢も、眼前の小さな事件を一つ一つ解決してゆくことでしか実現しないのではないかと考えるに至ったように見受ける。大きな理想は小さな現実を通して姿を現すのだという考えを、彼は火野映司(渡部秀)よりはむしろ伊達明から、身体で教わって学んだろう。そして今、後藤慎太郎にとって「世界を守りたい」という思いは、眼前の大切な人、伊達明を守りたいという強い思いを通して表現されるべきものになったのではないだろうか。
(2)火野映司の紫のグリードへの変化は深刻化している。
そのことは今朝の話の後半において彼がユニコーン型ヤミーによる事件の発生を、その現場から離れた場所にあったにもかかわらず、アンク(三浦涼介)と同じように瞬時に察知し得たことや、紫のコアメダルで変身しても暴走しなかったことから明白だが、もっと興味深い現象として、今朝の話の前半において彼がアンクと合流し得たことを見逃すわけにはゆかない。ユニコーン型ヤミーが風景画家志望の中年を襲撃した事件のことだ。その前夜からアンクは火野映司からは離れて行動していたが、事件が発生したとき、アンクは当然その現場へ飛び、やや遅れて火野映司も駆け付けた。アンクは当たり前のように「遅いぞ!」と怒ってはいたが、そもそも火野映司は一体どのようにして事件の発生を察知したのか。この点について劇中には何の描写も説明もなかったが、今朝の話の後半に見られた描写と照合するなら、火野映司もアンクと同じようにグリードの能力で察知したと見てよいだろう。
(3)ウヴァ(山田悠介)はカザリ(橋本汰斗)の一党に敗北して余りにも惨めな姿と化した。
起死回生を図り奇策に出ながらも宿敵カザリに裏をかかれ、殆ど全ての戦力を奪われたウヴァの哀しさ。悲しさを深めるのは、彼が悪党にしては少々おひとよしで堅実で、負けず嫌いで不屈の闘志を抱いている反面、将来に不安を感じて悩んでもいて、カザリのような悪賢さを欠いて頼りないところが、普通の人間に近いからだろうか。
ウヴァを演じている山田悠介はD-BOYS情報ブログにおける昨日付の記事において今回の話を「ウヴァさんの最終章」と呼び、「ウヴァの生き様が集約された回になっているかと思います。」「何をやってもうまくいかないウヴァさんですが、孤高のプライドを胸に一人で頑張ってます」と告知していた。なかなか的確で、しかも愛情のある評言だ。彼のような俳優に演じてもらえてウヴァも幸福だったろうと思わずにはいられない。