高校生レストラン第九話=最終回
日本テレビ系。土曜ドラマ「高校生レストラン」第九話=最終回。
約三ヶ月間にわたり放送されたが、劇中の時間は一年間も流れ、相河高等学校調理クラブ「高校生レストラン」の三年生も卒業の時を迎えた。現今、テレヴィドラマと云えば一部の例外を除けば三ヶ月間で完結するのを常とするが、所謂「学園ドラマ」では集団の発端から解散までを描くために、一年間の時間をわずか三ヶ月間で、否、正確に云えば、約十時間で描かなければならないから、どうしても無理が生じる。卒業という不可避の事実に対して劇中の人々が抱く思いを、視聴者がなかなか共有できないのだ。
ともあれ、今宵の最終回には、去りゆく三年生を皆で見送る場面があった。三年生の全員がそれぞれ別れの挨拶をした。これまでの話において何等かの出番のあった生徒と、特になかった生徒とを比較すれば、挨拶の密度、濃度も違ってしまうのは致し方ないが、ともかくも卒業する皆の顔を確り見せる場面は、学園ドラマにおいて最も味わいある場面であり得る。ところが、このドラマの場合、「高校生レストラン」という接客業の空間で、三年生も二年生も一年生も分け隔てなく働いてきたから、三年生のみに見せ場を与えて他の生徒には与えないことに少々無理を感じてしまう。
そう考えると、やはりこの「高校生レストラン」というのは、通常の学園ドラマ制作の手法、文法が殆ど通用しない特殊な題材だったのだということを改めて認識させられる。
ともあれ三年生は卒業後の進路を決め、卒業して、別れの挨拶をした。
坂本陽介(神木隆之介)は、尊敬し愛する村木新吾(松岡昌宏)に紹介されて、かつて村木新吾が修業した銀座の料亭に就職することができた。技は今なお未熟でも、基本を疎かにはしていないところが高く評価されて採用されたのだ。坂本陽介が村木新吾の教えを忠実に学んでいたところが高く評価されたということに他ならない。
だから坂本陽介は、「高校生レストラン」で学んだ全てのことへの感謝をこめて別れの挨拶をした。もちろん卒業生の中で最後に挨拶をした。
坂本陽介の前に、換言すれば最後から二番目に挨拶をしたのは、四日市の鉄工所への就職を決めた宮下剛(草川拓弥)だった。彼は三年生の中では坂本陽介に次ぐ重要人物だったのか。洋菓子店に就職してケーキを作るのが似合っているような顔をした彼が、洋菓子どころか、そもそも料理とは関係のない鉄工所への就職を決めたという点に厳しさを感じる。