仮面ライダーオーズ第四十一話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第四十一話「兄妹と救出と去る映司」。
火野映司(渡部秀)に突然訪れた孤独が救いようもない程に深く描かれた。孤独を生じた原因は、ロスト=アンク(飛田光里/声=入野自由)の襲撃を受けてアンク(三浦涼介)が姿を消したことにある。これまで火野映司はアンクから力を借りて闘ってきた。今、アンクから借りた力だけは残されているが、力の使い方を最も的確に判断できるのはアンクであり、アンクの不在は仮面ライダーオーズの力を半ば失うにも等しい。こうした力の欠如はそれ自体が既に孤独の感情の原因に他ならない。
だが、もちろん事情はそれだけではない。アンクの不在に伴い、これまでアンクに身体を占拠されていた「刑事さん」こと泉信吾(三浦涼介)が心身を完全に解放されたのだ。これによって泉比奈(高田里穂)は兄と再び一緒に暮らしてゆくことができるようになった。アンクの不在に伴う泉信吾の復活という事態を里中エリカ(有末麻祐子)は「ハッピーエンド」と形容したが、確かにこの事態こそは、泉比奈が取り戻さなければならなかったはずの、本来の平和な日常の条件に他ならない。
とはいえ、それは泉比奈が火野映司やアンクと出会う前まで当然と考えていた条件でしかない。今の泉比奈にとっては火野映司やアンクの存在が既に不可欠の条件と化しているのではないだろうか。長期間アンクに身体を貸していた泉信吾にとっても、同じことが云えるのかもしれない。
もちろん火野映司もまた、泉比奈やアンクを、今や自身の生に不可欠の存在と感じているに相違ない。
しかし今、アンクはいなくなり、泉比奈は泉信吾と一緒の生活を再開した。アンクが泉信吾の身体を借りて出現する前までの原状を、回復できるのかもしれない事態が生じた。それこそが泉比奈にとっての、本来の、真の幸福の形であるのかもしれない。そう考えた火野映司は、泉比奈や泉信吾の前から姿をくらますことを決意した。火野映司は自ら孤独を引き受けたのだ。
だが、火野映司の孤独は、同時に、泉比奈や泉信吾にも欠如の感覚を抱かせないわけにはゆかない。今朝の第四十一話が、何とも救いようもない程に深い孤独感に支配されていたのは、一人の寂しさが同時に周囲の寂しさでもあることに起因する。
そうした中、火野映司を助けるために真先に行動を起こしたのは、孤独から立ち直った人、後藤慎太郎(君嶋麻耶)だった。もともと誰とも打ち解けることのなかった彼は、伊達明(岩永洋昭)との出会いを機に、ともに闘うことのできる者を持つことの心強さを知った。ともに闘うことのできる者は、ともに競い合い、闘い合えて、それでもなお信頼できて、連帯、連携できる者のことであるだろう。そして後藤慎太郎は、元来、グリードを世界の敵と見定めている反面、グリードの一員であるアンク以上に火野映司とともに闘える者はいないことをも既に知っている。だから後藤慎太郎は、アンクの不在に伴う泉比奈の現状を「ハッピーエンド」と形容した里中エリカの冷徹な、しかし合理的な見解にはどうしても納得できなかった。それで後藤慎太郎は、アンクを救出するために一人で闘おうとしていた火野映司を守るために、ともに闘った。
火野映司を助けるために立ち上がり、ともに闘った後藤慎太郎の圧倒的な格好よさは、迷走の只中に伊達明と出会って以来の、約五ヶ月間をかけた変容の歴史の必然の結実として初めて見ることのできたものであると云わなければならない。