仮面ライダーオーズ第四十六話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第四十六話「映司グリードとWバースとアンクの欲望」。
完全体と化したガメル(松本博之)を相手に苦戦を強いられた仮面ライダーバース=後藤慎太郎(君嶋麻耶)が決死の作戦を敢行しようとしたとき、伊達明(岩永洋昭)が現れて仮面ライダーバースに変身し、一緒に戦った。
治療に成功して早くも帰国してきた伊達明に逸早く遭遇し、バースに変身するためのベルトを手渡していたのは里中エリカ(有末麻祐子)。伊達明にベルトを提供して第二のバースになってもらい、後藤慎太郎を手助けしてもらうことが、現在の不利な戦況において形成を逆転するための最良の、しかも殆ど唯一の策であり得ると冷静に判断して、里中エリカはそのとき偶々持ち合わせていた試作品ベルトを伊達明に渡したのだろう。バースの支援員であり上司でもある指揮官としての里中エリカならではの、合理的な判断と見ることができる。決して後藤慎太郎を喜ばせようと考えたわけではない。
後藤慎太郎と伊達明の二大バースは後藤慎太郎考案の決死の作戦をともに敢行して見事にガメルを打倒した。ガメルのコアメダルを動かしていた真のコアメダル、云わば核コアメダルを破壊したのだ。紫のグリードの力がなくともコアメダルを破壊できるのか?と一瞬は思わせたが、実はそうではなく、直後にその真相は明かされた。紫のグリードと化したドクター真木清人神尾佑)が、己の命令に従おうともしない愚かなガメルを懲らしめるべく、予めガメルのコアメダルに致命傷を与えておいたのだ。
しかし後藤慎太郎も伊達明もその真相を知らない。この件で両名がバースの力や団結の力を過信してしまうとすれば甚だ気の毒ではある。
ところで、常に温厚だったガメルが今回、見苦しいまでに暴走してしまったのはメズールを何とかして復活させたいと欲望したからだった。もちろんメズールが復活する可能性はない。なぜならメズールの核コアメダルは破壊されたからだ。しかしコアメダルにも、メダルを動かす力のある者とそれによって動かされるだけの者との差があるということは、必ずしもグリード間に周知の事実ではなかったらしい。ガメルはそのことを知らなかった。だから彼は核コアメダルではない単なるコアメダルを用いてメズールを復活させることができると信じていた。
その様子を見て嘲笑していたウヴァ(山田悠介)。彼は「ただのコアメダル」と真のコアメダルの差があることを充分よく知っている。なにしろ彼自身が、わずか一枚のコアメダルと化してもなお執念深く生き続けることができていたのだ。云わば経験者だ。彼は「最後に生き残るのは俺だ」と呟いていたが、果たして最終回まで生き残ることができるのだろうか。
ついに紫のグリードそのものと化した火野映司(渡部秀)と、赤のグリードとしての完全体をようやく見せたアンク(三浦涼介)との対峙を、どのように見ることができるだろうか。外見だけで云えば、アンクよりも火野映司の方が、見るからに怖そうな化け物だった。正義をなすために化け物の力を借りている火野映司と、人間のような生命や感覚を持ちたいと欲求しているアンクとの、対比と交錯の表れたものとして見ることができるだろう。
火野映司はアンクに対し、人間のような生命を持ちたいと欲求しているのであれば人間の生命を奪ってはならないことを訴えた。これは真理だ。だが、正義をなすために化け物の力を借りることには正義と真理はあるのか。
ここにおいて再び、あの第二十一話と第二十二話に登場したバッタ型ヤミーの問題に引き戻されてしまう。火野映司と神林進(伊嵜充則)の差は、正義に基づく行為への抑止力の差にあった。眼前の困っている人を救うことのみを目指して、過大な正義を目指さないのが火野映司の方針であり、そのゆえに彼の正義は、神林進の正義とは違って暴走して逸脱することがないのだ。だが、そんな火野映司も元来はもっと大きな正義、世界規模の、地球規模の正義を志していた。それこそが本来の彼の「欲望」であって、眼前の困っている人だけを助けるというような小さな正義では彼の精神は満たされはしないのだ。そうであれば、紫のグリードと化して人知を超越した巨大な力を獲得した今の火野映司には、あのバッタ型ヤミーどころではない凄まじい規模の暴走を始める恐れがあるのかもしれないのだ。