妖怪人間ベム第四話

日本テレビ土曜ドラマ妖怪人間ベム」。第四話。
地味な仕事に没頭して、それを生き甲斐と信じて、結婚や恋愛に時間を割く余裕もなく生きてきた結果、意に反して独身を貫いてきた女、朝比奈光(紺野まひる)の、自身が望んでも得ることのできない家族の幸福というものへの嫉妬、怨念という心の闇が描かれた。
この心の闇を必ずしも他人事ではないと感じた視聴者は少なくなかったのではないかと想像せざるを得ない。
朝比奈光が、家に転がり込んできた謎の子供、ベロ(鈴木福)をいつしか本当の家族のように愛するようになっていた感情は、誰にでも概ね共感できるのではないだろうか。朝比奈光が云っていたように「何かをしてあげたいって思える相手がいる」ことは幸福であるに違いないからだ。
そしてベム(亀梨和也)にとっては、既に家族も同然とも云えるベロがそのような相手であると思えるのだろう。
他方、ベラ(杏)が「一途」に好意を寄せ続けている相手、悩める少女の緒方小春(石橋杏奈)が毎晩、交番の入口に掲示される交通事故の件数を確認しては、死亡者が〇人であることを知る度に喜んでいるのも、なかなか深い。同じ地域の住人とはいえ、顔も名前も知らない人々の無事を知って幸福を感じるというのは、奇妙なようでいて実は本来、自然な感情であり得たろう。なぜならそのような感情こそが、世に郷土愛とか愛国心とか呼ばれるものの本質だからだ。それらは家族愛や恋や友情の延長上にある。グローバル主義や無政府主義やTPP推進論の類が正義に反するのは、それら自然な愛を否定し嘲笑する思想だからに他ならない。