妖怪人間ベム第六話

日本テレビ土曜ドラマ妖怪人間ベム」。第六話。
路傍の草花を決して踏み付けないように気を付ける程にも優しい人が、己の人生に多大の損害を与えかねない人物が現れたという特殊の事情はあるにしても、果たして通り魔殺人鬼にまで変貌し得るだろうか。
物語の全体像を、今までを顧みつつ今後を予想することによって展望しようとするなら、ベム(亀梨和也)とベラ(杏)とベロ(鈴木福)の誕生の謎、彼等が人間に対して抱く好意や敬愛、信頼、感謝、好奇心、疑念、軽蔑、諦め等の様々な感情、夏目章規(北村一輝)の過去、そして彼等四名の間の交流や他の周囲の人々をも含めた「人間」同士の交流等、これまでの物語を構成し彩ってきた話をあらためて一つに結び付け、しかも今後の激動へ結び付けてゆくためには、今回のような話がここに置かれなければならなかったのだろうことは了解できる。だが、その要をなす程の人物の造形、あるいはその重要な行動を導く動機に説得力が足りていない。
反面、ベラがこの人物との出会いを通して抱いた恋のような心の表現には説得力があった。草花を見ても月を見ても、何を見ても不図連想されるのは好きな人のことばかり…というのは確かにその通りだろう。人間に近い姿と心を持ちながらも決して人間ではない妖怪人間の視覚を通して、人間の素直な感情の形を見詰め直そうというのがこのドラマの隠れた意図の一であるなら、その点は成功しているのではないだろうか。