金曜ナイトドラマ13歳のハローワーク第二話

金曜ナイトドラマ13歳のハローワーク」。第二話。
この番組は、予想していたよりも面白くなりそうであると感じられてきた。話は楽しめるし、考えさせる要素もあるし、何といっても出演者の顔触れが意外に絶妙で魅力がある。
今回、主人公の小暮鉄平(松岡昌宏)が二十二年前の世界へ飛んで、そこで目撃した仕事は、ネジやナットを生産する小さな工場と、工場に融資をしていた銀行。これら二つの職場の関係が、バブル景気の罪とその崩壊の悪影響をあらためて明らかにしたのは、劇の構造として実に明快だった。
もともと昭和の日本経済の強さを支えていた基盤が、主に中小企業等における地味で地道な職人技の熟練と洗練、そのための人材の育成、根気強く気の長い研究開発の蓄積にあったのはよく知られているが、投機に煽られた空前の好景気は楽して儲ける路線へ多くの人々を駆り立てた。無論そうした軽薄な風潮の中でもなお、勤労の倫理(モラル)と気概(モラール)は生き残っていたはずだが、バブル崩壊後のグローバル化構造改革の路線は当然「労働力の清算」(リストラ)を求め、こうした日本経済の底力の基盤をも粉砕し崩壊させようとしている。この路線が最近さらに加速化し、国民の貧困化を進めつつあるのは誰もが知る通りのことだろう。
工場の経営者(阿南健治)に対して銀行の幹部(神尾佑)が、融資の返済について延期は認められないこと、ゆえに期限までに返済できない場合には工場の土地を差し押さえる予定であることを告げ、また、開発途上の技術には融資の価値なんかないとまで冷酷に云い放って去ったとき、小暮鉄平は、この銀行家の子息の村山和夫武井証)に憧れるあまり子分にもなって将来は金融業に就職したいとまで云い出していた二十二年前の彼自身、十三歳の無邪気なテッペイ(田中偉登)に対し、「テッペイ!これがおまえのやりたい仕事か?」と問いかけた。この問いは偶々一部始終を目撃してしまったテッペイの心にも流石に応えたようだが、テッペイと一緒に見ていた村山和夫の心にはもっと響いていたようだ。なにしろ、その銀行家は彼の最も尊敬する父であるし、工場の社長の一人娘は彼の片想いの相手であるのだからだ。
二十二年後、著名な投機家となった村山和夫長谷川朝晴)が、その片想いの人である千里が亡き父の志を継いで再興した工場を訪ね、その将来性を買って融資を申し出た場面は、融資に関する唯一の条件として、二十二年前に食べ損なった千里の手作りのゼンザイを食べさせてもらいたいと告げたところも含めて、実によかった。投機家が真の投資家になった瞬間が、二十二年間もの歳月を隔てた愛の告白の場にもなったのだ。
ところで、テッペイの親友、三上純一中川大志)の出番は今回も決して多くはなかったが、なかなか興味深い人物像を見せた。彼は、テッペイが村山和夫の「片腕」として教室内でオークションの真似事をしていたときにはその様子を半ば呆れつつも温かく見守っていたが、その後、テッペイが腹部に激痛を感じて倒れそうになったときには、驚いて心配して、教室の最前列から最後列へ駆け付け、まるで背後から抱きかかえるような姿勢で介抱しようとしていたのだ。番組の公式サイトの表紙では彼は消防士か何かのような格好をしているが、愛する人々を守りたいという思いを強く抱いている熱血の少年なのだろうか(まるで昨年の秋・冬の水曜ドラマ「家政婦のミタ」における阿須田家の長男「カケルちゃん」こと阿須田翔のように)。
小暮鉄平は、二十二年前の世界に滞在している間、自身が二十二年後の未来から来た人間であることを知られてはならない。謎の男からそのように通告されていた。自身が未来人であることを発言しようものなら、その身に重大な危機が訪れるだろうことも予告されていた。ところが、危機に見舞われる彼の身というのは実は、三十五歳の彼の身ではなく、二十二年前のテッペイの身のことだった。三十五歳の小暮鉄平が二十二年前の世界で自身の正体を語り始めようものなら、十三歳のテッペイが酷い目に遭うのだ。三上純一を動揺させた今回のテッペイの身体の突然の異変こそはその発生の最初の事例に他ならなかった。この設定も面白い。