金曜ナイトドラマ13歳のハローワーク第三話

金曜ナイトドラマ13歳のハローワーク」。第三話。
今回、主人公の小暮鉄平(松岡昌宏)が二十二年前の世界へ飛んで、そこで目撃した仕事は、看護師と、CA=キャビンアテンダント。二十二年前に過酷な仕事だった看護師は現在ますます過酷な仕事になっているのだろうとも想像されるが、キャビンアテンダントの変化はもっと凄まじいらしい。なぜなら所謂ハケン(派遣労働)の制度が導入されてしまったからだ。
劇中に説明されていたところによると、二十二年前にはスチュワーデスと呼ばれていたキャビンアテンダントは世間の女子たちの羨望の職業で、年収も一千万円位あって当たり前(?)だったのかもしれないが、今日、所謂激安航空会社に派遣社員として雇用されるキャビンアテンダントの場合、大手航空会社に比較して職務も地味である上、年収は意外にも二百五十万円程度だとか。警視庁警察官=地方公務員である小暮鉄平の年収の半分程度。途轍もない激変だ。それでも、年収百数十万円で生活するのが普通になっているかもしれない今日では、これは特別に不遇であるというわけでもないのかもしれないのだ。
この激変が劇中に物語ったことは、金銭や世間体だけで職業を選んでは意味がないということだった。結論としては平凡でも、それがわずか二十二年間に起きた激変を通して述べられたところに意味がある。
極めて華麗な職業であると思われているキャビンアテンダントの仕事にも心身を病みそうになる程の苦しさがあることを、二十二年前の世界で小暮鉄平は合コン相手のスチュワーデスから聞かされたし、現在の世界でも、合コン相手のハケンのキャビンアテンダントから聞かされた。他方、極めて過酷な職業である看護師の仕事には看護師ならではの喜びがあり、ゆえにそれを天職であると感じ、天命として引き受けている人がいる。二十二年前の若槻みのり(石田ひかり)がそうだった。
ところで、テッペイの親友、三上純一中川大志)の出番は今回も決して多くはなかったが、やはり興味深かった。
一つ目の出番は、小暮鉄平が二十二年前の世界へ飛んで、二十二年前の彼自身、十三歳の無邪気なテッペイ(田中偉登)が勉強に励んでいる予備校の教室を覗いたとき。若槻みのりの娘、若槻葵(工藤綾乃)を相手に英会話をしていたのが三上純一だった。スチュワーデスに憧れて英会話の能力を身に着けたい若槻葵は、休憩時間を利用して、成績優秀な三上純一から英会話の指導を受けていたのだ。中川大志も英語をよくするのだろうか。
二つ目の出番は、テッペイが若槻葵に触発されて、パイロットになりたい!と云い出した場面。テッペイはパイロットの仕事そのものに関心を持ったわけではなく、単に、パイロットになればスチュワーデスにモテるに違いない!と考え、モテる男になりたい!と願望しただけだった。それでも、既にパイロットになれるかもしれないと思って舞い上がっていたテッペイ。その姿を見詰めて三上純一は笑んだ。荷物を片付けて帰宅すべく席を立って教室を出ようとしたときの、一瞬の表情ではあったが、何だか意味ありげだ。しかし立ち上がりながら顔を上げて友を見詰めたときの少し驚いたような顔から笑顔への変化は特に美麗だった。
三つ目の出番も、予備校の休憩時間、テッペイが相変わらず若槻葵と一緒にパイロットとスチュワーデスになり切って盛り上がっていたとき。その様子を一瞥して笑みながらも少し呆れたような表情をしていた。
上純一は友であるテッペイをどのような思いで見詰め、笑んでいるのか。そのことは十三歳の少年少女が職業について考えるこのドラマにおいてどのような役割を果たすことになるのか。なかなか目が離せない。