土曜ドラマ理想の息子第三話

美しい人は、遠方から眺めているだけの者にも幸福感を与える。
ところで。
土曜ドラマ「理想の息子」。第三話。
第二話において海王工業高等学校一年生の間に覇を唱えつつあった鰐川悠馬(入江甚儀)は、鈴木大地山田涼介)の反撃を受けて、武器である牙を失ったが、今回はそうして弱体化したところを何者かに襲撃され、皆の前で恥をかかされたことで急に、苛める側から苛められる側へ転落した。小林浩司(中島裕翔)はそれを面白がっていたが、鈴木大地は直ぐに救いの手を差し伸べて鰐川悠馬の友になった上、鰐川悠馬を苛めていた連中からも慕われるようになった。
それどころか、鰐川悠馬を襲撃した犯人である羽生義和(柄本時生)までも鈴木大地との対決に敗北した末に鈴木大地を慕うようになった。
こうして鈴木大地の仲間たちは、小林浩司、鰐川悠馬、羽生義和のほか、第一話における敵だったボクシング部の「ウッチー」こと内山吾郎(武田航平)も含めて現在四名。闘いを経て仲間が増えてゆく感じが楽しい。
もっとも、これに関しては現時点で既に気になる要素がある。先ずは、内山吾郎の兄貴分である三船憲吾(藤ヶ谷太輔)は仲間であるのかどうかという問題。なにしろ彼は、実の母に捨てられたことから母性に強く憧れ、鈴木大地の母の鈴木海(鈴木京香)に心惹かれている中で鈴木大地に嫉妬せずにはいられなかったからだ。
もう一つ気になるのは、鈴木大地の最初の仲間になった小林浩司もまた鈴木大地に嫉妬せずにはいられなかったという問題。とはいえ彼が憧れている相手は鈴木大地の母ではなく、鈴木大地その人。
巨大な建設会社の総帥の地位を世襲するに相応しい「カリスマ性」の持ち主であって欲しい!と母の小林光子(鈴木杏樹)から常々強く期待されている彼は、どう頑張っても自身には全く縁のなさそうな「カリスマ性」がどうやら鈴木大地には生まれながらに具わっていて、ゆえに敵対した人々を次々に仲間にしてしまえるばかりか、周囲の人々をも惹き付けて、話題の中心になってしまう現実を目の当たりにして、嫉妬して、自身こそが鈴木大地になり代わりたいとさえ願わないではいられなかったのだ。
このことは今回の話の展開に大きく、しかも直接に作用したが、もし今後の展開にも影響を及ぼし続けるようであれば、意外にも小林家における母子関係の問題が、この陽気なドラマに闇を作ることになるかもしれない。
前回かなり怖い顔をしていた鰐川悠馬が今回いかにも頼りなさそうな、弱そうな感じに変わっているのも面白かったが、本来の入江甚儀の姿に戻っただけとも云えなくもない。