怪盗ジョーカー第三十一話のキャプテン・ブルー

テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」。第三期の内、第三十一話と第三十五話、第三十六話をNTTひかりTVのWEB配信で購入し(税込二百十六円で三日間視聴可能)、繰り返し繰り返し見ている。
第三十一話「嘘と白魔の海賊船」は、小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第七巻の「真実と嘘の海賊船」と、第十九巻の「白魔の幽霊船」の二話を組み合わせた作品。原作においてブルー海賊団の少年海賊船長、キャプテン・ブルーが初めて登場する話が第七巻の「真実と嘘の海賊船」で、再登場する話が第十九巻の「白魔の幽霊船」。全く異なる二つの話を見事に一つに融合させていて、何一つ違和感がない。
面白いのは、前者に登場するジョーカーとキャプテン・ブルーの敵がオクトパス海賊団の首領オクトパスであるのに対し、後者に登場する敵が白魔と呼ばれる巨大なダイオウイカであること。アニメ版では、云わばタコとイカを一つにしたような具合だが、さらに白魔を陰で操る真の敵として赤井翼=フェニックスを登場させていて、実のところ、オクトパスの役割をそのまま赤井翼が引き受けた格好でもある。
原作の「白魔の幽霊船」では、ジョーカーとキャプテン・ブルーとハチとロコが力を合わせて白魔を退治したあと、ハチがそれを焼いて巨大な焼イカを拵え、ジョーカーが喜んで食べようとして、キャプテン・ブルーは呆れていたが、アニメ版の「嘘と白魔の海賊船」では、ハチが拵えた巨大な焼イカをキャプテン・ブルーとブルー海賊団の皆が楽しそうに食べていて、ジョーカーだけは赤井翼に宝を奪われたことへの怒りから食事どころではなくなっていた。
ブルー海賊団の人々は若いキャプテンを囲んで座り、偉大な海賊キャプテン・ブラックの孫ブルーの強さ、賢さ、勇ましさを口々に讃え、そうして大いに礼賛されてキャプテン・ブルーも笑いが止まらない様子だった。彼の勇敢な活躍は殆どジョーカーのおかげではあったが、ともかくも戦績を上げ得たことで自信を持ち、早くも有頂天になっているところにキャプテン・ブルーという人物の面白さがある。実際、原作でも第七巻では頼りなかったキャプテン・ブルーが第十九巻では既に頼もしくなっていて、その変化は彼がジョーカーのおかげで自身の力に自信を持ち得たことに因るのが明白。その変化をアニメ化したのが、アニメ版におけるあの楽しい焼イカ食事会の場面であると云える。この辺の、原作にある要素を拾い集めて違和感なく物語に組み込んでみせる改変の上手さが、アニメ「怪盗ジョーカー」の素晴らしさ。
アニメ版では、キャプテン・ブルーの居室に勝手に上がり込んだジョーカーがキャプテン・ブラック伝来の名刀を勝手にもらい受けようとして、キャプテン・ブルーを慌てさせる場面があった。原作にはそんな場面はない…かと思ったが、よく見れば、第七巻の裏表紙のイラストがそんな場面を確り表してある。なるほど、アニメ版は裏表紙のイラストまでも拾い上げて物語に組み込んでいたのか。実に芸が細かい。