怪盗ジョーカー第三十六話におけるサーベルタイガーとホッシー
テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」。今日もNTTひかりTVのWEB配信で視聴。
第三十六話「スカイ・ジョーカー危機一髪!」は、原作にはない話だが、いかにも原作のどこかにありそうな感じの話で、説得力がある。否、むしろ原作にはないからこそ、原作や今までのアニメ版における様々な要素を結集して話を構成していて、却ってそれが説得力を増しているのだろう。
この話では、ジョーカーとハチとホッシーの居住空間とそこにおける日常生活が存分に描かれたほか、ロコの冷めた知性、ダークアイとハチの奇妙な関係、鬼山警部の無謀な情熱、赤井翼の雨宿り、そしてスカイ・ジョーカー内の宝物庫に今も眠る「サーベルタイガーの冷凍ミイラ」と、その獲得をめぐり想い出されるジョーカーとクイーンとスペードの幼い日のこと等、色々な見所があって一つ一つ語り出せば際限がない。
中で着目したいのは「サーベルタイガーの冷凍ミイラ」に食らいついたホッシーの愛らしさ。サディスティクな大富豪の子息ダンプの豪華客船で、まるで檻に閉じ込められているかのように不自由な生活を強いられていたキング少年(のちのスペード)が、その船に蔵された財宝「サーベルタイガーの冷凍ミイラ」を頂戴すべく参上した怪盗見習いのジャック(のちのジョーカー)とクイーンに出会い、自由に生きることの素晴らしさを感じ取って、同じように怪盗になりたいと思い、ダンプの許を去ることにした夜の出来事は、小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第十巻の「大海を渡る絆」と、アニメ版の第二十一話「大海を渡る絆」で明かされた。今なおスカイ・ジョーカーの宝物庫に保管されていた幼い日の思い出の宝を前に、スペードもジョーカーもクイーンも暫し懐かしんだが、その抒情の気分を破るかのようにホッシーが強烈に食らいついたのだ。このことは「サーベルタイガーの冷凍ミイラ」が、古代の神獣アクルックス(ホッシーの本名)や南十字星の使者フェニックスの真相にも関係を有し得るのかもしれないことを予感させるが、同時に、もう一つの見所として、猛烈な勢いで宝に食らいつくホッシーの凶暴な顔が愛らしかった。
原作でホッシーが初めて登場したのは第十八巻「財宝列車と新たな仲間」で、以後、ジョーカーとハチと一緒に生活するようになったが、実のところ、最初に登場した時点ではホッシーはそんなに愛らしくは見えなかった。その後、徐々に愛らしい姿になった感があるが、アニメ版では、様々な表情や動作を見せ、声を聴かせることで予想以上の愛らしさを発揮している。そして案外、凶暴な表情に愛らしさがある。『怪盗ジョーカーミラクルファンBOOK』で脚本家の佐藤大が「ホッシーは…あんなにかわいくなるとは。衝撃の破壊力!」(63頁)と感心しているのも肯ける。
ハチとダークアイの関係も面白い。ハチはダークアイを「キョキョキョの包帯おっさん」と認識している。そしてハチは美少女アイドル三姉妹シャッフルシスターズの長女アイの大ファン。しかもハチは、ダークアイの正体がアイであることを既に知っている。それなのに、ハチはダークアイと接するときアイを意識することなく、アイと接するときダークアイを想起することもないように見受ける。「人造昆虫カブトボーグ」における天野河リュウセイとビッグバンの関係のようでもある。