マギ第二十四巻

大高忍『マギ』第二十四巻。
第二十三巻に続いて「アルマトラン」篇。
王を名乗る王の器たちの大半が集結し、四人のマギの内三人が揃った中、ソロモンとシバの御子であると同時にソロモンの「写し身」でもある至高のマギ、アラジンが世界の真相を明らかにした。それはソロモンによる父王ダビデへの反抗から、アルマトラン建国、それに敵対してダビデ以前の世界まで戻そうと企てる暗黒の組織「八芒星の共同体」の成立、ソロモンの最も信頼する友だったウーゴによるアルマトラン再建、新たな惑星における新世界の建設、「王の器」選定方法の制定、そしてアラジンの育成までの物語。
アラジンが明かしたアルマトランの物語は、ソロモンの物語である以上に実はウーゴの物語だった。ウーゴは世界の全てをアラジンに托した。ソロモンとシバの御子であるアラジンをウーゴは自身の大切な子として愛し、やがて自身の主として敬った。しかしアラジンはウーゴを友として愛した。
世界の真相に一同は動揺していたが、一味違った動揺をしていたのはアリババ。アリババは今まで常にアラジンに励まされ、助けられてきたが、そんなにも強いアラジンが実は生まれる前に両親を亡くし、孤独に苦しみ、悩みながら生きてきた事実を知ったアリババは、自分がアラジンの弱さも苦悩も何も知らなかったことに愕然とし、動揺していた。だからアリババは今後こそアラジンのために力を貸したいと思っていることを告げようとしたが、生憎、モルジアナに先を越されてしまった。アラジンとアリババとモルジアナのこのような特別な関係は、アリババの仲間たちにとっては自分たちの間の「兄弟」同然の特別な関係と同じであると見えた。
動揺する一同の中にも様々な反応があった。煌帝国の練紅明は兄の練紅炎に意見を述べ、ムー・アレキウスは煌帝国の輪から離れてレーム帝国のマギであるティトスに話しかけ、ティトスは、「大峡谷の守り人」と呼ばれたユナンを見詰め、ユナンはシンドバッドを見詰めていた。ジャーファル率いる八人将も色々意見を交わしていたが、一人、シンドバッドだけはアラジンによって明かされたソロモンの意志に深く心動かされていた。アラジンもアリババも、シンドバッドの様子に不安を感じた。アリババの様子を、モルジアナもトトもオルバも心配した。
ここであらためてアラジンは、「王の器」たちを前に、シンドリア率いる七海連合とレーム帝国と煌帝国の三国間に停戦協定が結ばれるべきことを呼びかけた。共通の敵がある中で、世界を救うのか?滅ぼすのか?を問いかけた。再び動揺が広がったが、少なくともシンドバッドの「肚は既に決まった」ことを、八人将の古参であるジャーファルとヒナホホとドラコーンは見抜いた。多分、練紅明とムー・アレキウスもそれぞれ既に何かを決めたのだろう。
それにしても、アラジンが明かした世界の真相には極めて厄介な性格がある。なぜなら敵対する「八芒星の共同体」の側にも一応の正統性があるから。運命によって支配される理不尽な世界に対する反逆児がソロモンであり、ソロモンの意志を継いだウーゴが白く輝く世界を創ったが、ソロモンによる世界の変革を快く思わなった勢力はそれをもともとの神の意志に適うように暗黒の世界へ戻そうとしている。この世界における神はソロモンとウーゴではあるが、それは反逆の成果でもあり、撤回を求める行為は必ずしも不当ではない。しかし撤回された暁には不幸に満ちた暗黒の世界しかない。