仮面ライダーと木村拓哉

テレビ朝日開局50周年記念・50時間テレビ「SMAPがんばりますっ!!」は、夜九時から十二時九分まで約三時間の生放送番組。夜十時の少し前から見始めたが、思いのほか面白かったので慌てて録画をし始めた。「木村拓哉全力坂」という企画では、木村拓哉が朝から夜まで十六時間かけて港区にある五十もの坂を全力で駆け上がり続け、それが妙に恰好よくて楽しかった。企画の冒頭、日本坂道学会副会長のタモリが登場して坂道美学を論じたのも素晴らしかった。
しかし今宵のこの番組における最大の見所は稲垣吾郎企画「仮面ライダーG」にこそあったろう。石森プロ&東映の全面協力を得て特別に制作された新ライダーと云われていたが、むしろ石森プロ&東映が存分に本領を発揮した成果としての、珠玉の小品と評すべきだろう。普段の日曜朝の「仮面ライダー」の制作の場合、一年間にわたり毎週放送され、しかも毎年それを新たな形で繰り返されなければならないことから、予算の上でも発想の面でも色々「ペース配分」を考える必要があるのだろうが、一夜だけのこの特別企画では、SMAPの経済力と政治力を背景に思い切り暴れることができたのだろう。
ことに迫力に富んでいたのは、人質を取ったままヘリコプターで逃げるテロリスト集団の指導者(上地雄輔)を、バイクに乗った仮面ライダーGが追跡する場面。テロリストはGを目掛けて銃を撃ち、Gに避けられた弾丸は地に当って爆発した。爆破の火炎が幾つも上がる中を駆け抜けてゆく仮面ライダー!という構図の格好よさは無論のこと、そうした矢継ぎ早の攻撃を潜り抜けたライダーがその疾走の勢いを借りて宙へ駆け上がり、敵のヘリコプターに突撃した展開は、全ての視聴者の期待に応えたものと云ってよいだろう。
怪獣と化した敵の攻撃に、Gが挫けそうになっていた瞬間、仮面ライダーディケイド(声:井上正大)をはじめとする仮面ライダー衆が全員集合し、応援し、奮起を促した。ここで面白かったことの一つはその場面を見たときの木村拓哉の驚きと感動の表情。「仮面ライダーG」を見ている間、彼は一々感動し興奮して楽しんでいて、見終えたあとは番組全体の最後に至るまで彼は稲垣を羨んで嫉妬の炎を燃え上がらせていた。本格的「仮面ライダー」の主演をつとめた稲垣に対する彼の嫉妬の凄まじさこそが、実は「仮面ライダーG」一番の見所だったのかもしれないとさえ思える。木村拓哉にも、これを超える水準の仮面ライダー(或いはスーパー戦隊)をやらせてやればよいのに。