妖怪をも圧倒するケータの欲望

ニコニコ動画の「テレビ東京あにてれちゃんねる」(http://ch.nicovideo.jp/ch7)内の「妖怪ウォッチ」チャンネル(http://ch.nicovideo.jp/youkai-watch)で最新の第六十話の配信あり。
今回は主人公ケータ大活躍。著名な妖怪少女、トイレの花子さんに助言をして信頼を獲得したばかりか、強敵の妖怪しきるん蛇との戦いでは、戦うこともなく自前の性格だけで勝利した。
絵も綺麗で、ジバニャンやケータの姿形の愛らしさが存分に表されていたのは良かったが、反面、ケータの人物像は「キモイ」奴としての側面をも露呈してしまった。
コマさん&コマじろう兄弟で結成された「コマさん探検隊」。アマゾンの奥地で謎の原始超人ダノタ・ツサンオを探索したが、仕掛け人の矢良瀬古里無が雇った偽ダノタ・ツサンオの役者の仕事振りが余りにも杜撰で、流石に矢良瀬古里無が気の毒に見えてくる程だった。矢良瀬古里無という名は「ヤラセ懲りない」と読めるが、この「懲りない」というのは、どうやら一所懸命に働く姿勢を表していたらしい。最後にコマさんが目撃した本物の原始超人ダノタ・ツサンオの姿は偽者とは異なって格好よく見えたが、あまりにも遠くにあって、明確には見えなかったのが残念。
近頃のトイレの花子さんの悩みは、昨今の高度情報化の中、トイレの花子さんに関する目撃情報が余りにも瞬時に拡散されてしまい、広く知られ過ぎてしまって、飽きられ易くなってきていること。トイレの花子さんをはじめとする学校の怪談の類では、怪奇現象の発生の仕方に色々な類型があって必ずしも一定してはいないが、その原因は実は、トイレの花子さんの側が、エンターテイナーとしてのサーヴィス精神から、色々工夫を凝らしてきた結果であるらしい。実に勉強熱心。ウィスパーも「参考になりまウィス」と感心していたが、ジバニャンは「何の参考ニャン?」と疑念を呈していた。結局、ケータからの提案を受けて、トイレの花子さんも様々な登場の仕方を試し始め、最後には、ケータ宛に郵便物で届いたDVDを再生するテレヴィ画面から「来る、来る、ぱあっと来る」と歌いながら這い出して来るという学校とは関係ない登場の仕方までも試したが、驚いたケータに感想を聴くトイレの花子さんの様子には、助言者ケータへの信頼感が窺えた。トイレの花子さんにとってケータは、メダルをあげただけの相手ではなく、間違いなく友達であるに違いない。
妖怪しきるん蛇の事件。カンチが今回も妖怪に憑かれ、奇行を重ねたところから始まった事件だが、奇行の数々が妖怪の仕業であることにケータは気付き、発見されて追われた妖怪しきるん蛇が、次にフミカに憑いたことで、事件は真の深化を見せた。しきるん蛇に憑かれてケータに色々命令を始めたフミカに、ケータは魅了され、己の人生の全てをフミカに仕切って欲しいと願望し、フミカに仕切られるまま身も心も全てを捧げて一緒に生きてゆく己の人生を妄想し始めた。このような関係を、世間は「女王様」と「奴隷」の語で形容するのかもしれない。妖怪あかなめに憑かれたケータが、クマとカンチには欲情に突き動かされるまま攻め抜いたにもかかわらず憧れのフミカには攻める前に先ずは声をかけたばかりか遂には云いなりになったのも、このようなケータの内に秘めた欲望の表れではなかったろうか。
ケータのこの妄想に呆れ果て、友達メダルだけ置いて去ってしまった妖怪しきるん蛇は、変態とは全く無縁の、健康な性格の妖怪であるのかもしれない。フミカにも「キモイ」と見られてしまったらしいが、ケータの妄想の中の、青年ケータ、社会人ケータは格好よかった。会社へ携えてゆく弁当箱の中身が全てチョコボ―であるというのはジバニャンから見れば嬉しい事態であり得ても一般には辛い事態で、ケータもそれをサディスティクな仕打として妄想したわけだが、この場合、辛く耐え難い事態であることを前提した上で快楽を感じてもいるところに変態性がある。一ヶ月間の御小遣いとして千円しか支給されないというのも同じこと。ケータの欲望は実に深いのではないかと思われる。