矢良瀬古里無とコマさん&コマじろう兄弟とケータ/ケータを頼るロボニャン

ニコニコ動画の「テレビ東京あにてれちゃんねる」(http://ch.nicovideo.jp/ch7)内の「妖怪ウォッチ」チャンネル(http://ch.nicovideo.jp/youkai-watch)で最新の第六十五話の配信あり。
第六十五話を構成する話数は三ではなく二。しかも二話の中の一話目が放送時間の過半を占めた。それが「コマさん探検隊」の最終回。もちろん題名は長い。「コマさん探検隊!最終回 来るか来るかとは思っていたが!やっぱり訪れた衝撃の結末!『矢良瀬ディレクター』最後の日!」。
さくらテレビの番組「金妖スペシャル!コマさん探検隊!」における探検が全て「インチキ」であると暴かれ、番組ディレクター矢良瀬古里無は「インチキディレクター」と批判された。確かにその通りだが、どこからどう見てもインチキだらけのあの番組を、インチキであるとは思わずに視聴していた人々がいたらしいという事実にこそ驚かされる。インチキの安さを笑いながら見る類の番組ではなかったのか。意外だ。
テレビの検証番組において、インチキであることを証明する根拠として指摘されたのは、現地の案内人が全て同一人物(チャッピー氏)であること、ダノタ・ツサンオが「タダノ・オツサン」でしかないこと、矢良瀬古里無が自ら危険な目に遭っていたこと等。そして、このようなインチキの数々が極めて悪質であることの理由として、「純粋な兄弟」を騙して巻き込んでいたことも挙げられた。
このときテレヴィ番組にはコマさん&コマじろう兄弟の正体ではなく人間体が映っていたわけだが、コマじろうの人間体は精悍で格好よかった。
番組を打ち切られた矢良瀬古里無は無用となった荷物を二人の部下に片付けさせていた。二人の内の一人はチャッピーだが、少々意外にも彼は坊主頭をしていた。どんな扮装でも似合うように、坊主頭にしていたのだろうか。片付けられた荷物の中には、過去の番組において使用した扮装の道具があった。過去には「怪力仙人ゴーリキピカーン」や「歩く小便小僧テクノシャーシャー」を登場させたらしい。
その夜、会社を寂しく去ろうとする矢良瀬古里無の前に、心配したコマさん&コマじろう兄弟が現れた。コマじろうは元来、矢良瀬古里無のヤラセを全て見抜いていたが、コマさんは信じていた。信じていただけではなく、矢良瀬古里無の嘘が嘘ではなかったと判明する瞬間をも目撃していた。だから矢良瀬古里無の話が全てインチキだったと暴露された今、むしろどうしてそのようなインチキをする必要があったのかと尋ねずにはいられなかった。インチキなんか仕掛けなくとも、本物を撮影できたはずだからだ。
心配するコマさんからの問いかけに、矢良瀬古里無が明かした少年時代の思い出は、なかなか「沁みる」話だった。ギョッピアーラも、ネッシーも、グレー七号星人も全ては、病院で寂しい入院生活を過ごしていた少年時代の彼のために、彼の叔父が聞かせてくれた冒険物語の中の登場人物だった。焼芋屋で生計を立てながら冒険旅行家に扮して奇想天外な話を楽しませてくれた彼の叔父は、探検における異生物との格闘の戦利品を土産物として持ってきてくれたが、それらは皆、叔父の「手作り」の品だった。話も品も全て嘘だったが、全ては少年を楽しませるための「手作り」だった。その思いが、大人になった矢良瀬古里無に受け継がれていた。彼の番組に登場した古代生物や怪獣や異星人の扮装も、矢良瀬古里無が自ら針と糸で縫って拵えた「手作り」の品だった。彼は確かに「夢」のために頑張っていたのだ。
コマさんは云った。「オラ、知ってるズラよ、矢良瀬さんはいっつも一所懸命だったズラ」。そして続けて「あと少しで撮影できるところだったズラ」とも云ったが、この言葉の真の意味は、矢良瀬古里無にもコマじろうにさえも解らなかったろう。しかし矢良瀬古里無もコマじろうも心動かされ、コマじろうは尊敬する兄の思いを汲んで、極めて大胆な解決策を提案した。コマさんの友達であるケータに頼んで妖怪ウォッチで巨大妖怪だいだらぼっちを召喚してもらい、その姿を矢良瀬古里無に見せて撮影させた。見せるための道具は、「妖怪通販」で取り寄せておいた「妖怪丸見えエクストラオリーブオイル」。
この最終回には、矢良瀬古里無に対するコマさん&コマじろう兄弟の優しさ、コマさんに対する弟コマじろうの敬愛(そして慈愛)、ケータに対するコマさんの信頼が描かれたが、矢良瀬古里無の無茶な活力に対するチャッピーや上司の温い温かさも印象深かった。コマさん&コマじろう兄弟の住居も、あらためて見ると川辺に営まれた草庵のようで、趣に満ちていた。
伝説の牛乳ぞうきん事件。給食の時間、牛乳を飲んでいたケータの前でクマが変な顔をして笑わせようとしたところ、ケータは我慢したが、クマの横に並んでいたフミカがそれを見て笑ってしまい、牛乳を吐き出してカンチに浴びせた。ケータはフミカを犠牲者と見たが、本当の犠牲者はカンチに他ならない。
このあと、床にこぼれていた牛乳を雑巾で拭いたフミカは、その雑巾を洗いもせずにそのまま干して乾かそうとした。事件の直接の発端を作ったのはフミカのこの無神経な行動であると云えるが、事件解決のため召喚された近未来の猫型ロボット、ロボニャンによれば、「学級文庫」の裏には五ヶ月前に牛乳を拭いた「伝説の牛乳ぞうきん」があり、清掃道具を収めるロッカーの裏には十ヶ月前に牛乳を拭いた「レジェンド牛乳ぞうきん」があって、事態を悪化させていた。さくら第一小学校五年二組は妖怪よりも恐ろしい学級であると云うほかない。
ロボニャンが召喚されたのはその前身にあたるジバニャンが先に倒されてしまったからだが、ジバニャンがあまりにも呆気なく倒れた原因として、現場から逃亡していたところを不意に召喚されて現場へ引き戻されたことの衝撃の大きさがあったろう。妖怪ウォッチがある限り、どんなに逃亡したとしてもケータの魔の手から逃れることはできないことを、ジバニャンも解っていたはずであるのに。第十八話「鬼時間」で経験済であるし、第四十四話「妖怪ハナホ人」では召喚のタイミングの最悪の理不尽を味わっていた。
今回の事件はロボニャンの力でも解決し得なかったが、印象深かったのは、怯えたロボニャンが同じく怯えたウィスパーとともに、ケータの背中に隠れていたところ。ロボニャンがジバニャンに見えた。