氷菓コミカライズ版第八巻/怪盗十文字事件ついに表面化
米澤穂信原作/タスクオーナ漫画/西屋太志キャラクター原案『氷菓』コミカライズ版(角川コミックス・エース)。
第八巻。
神山高等学校文化祭(カンヤ祭)の二日目、お料理研究会主催「ワイルドファイア」における「チーム古典部」伊原摩耶花の危機が、折木奉太郎の大声と小麦粉で救われる話から、お料理研究会から「おたま」が盗まれていた事件を機に、「怪盗十文字」の法則性を折木奉太郎が見付け出し、これを古典部の文集『氷菓』の宣伝に繋げるため千反田えるが再び壁新聞部の遠垣内将司に接触する話、容疑者が千人を超え、ゆえに折木奉太郎には向いていないと思われるこの事件を自力で解決してみたいと考えて福部里志が行動を起こす話、漫画研究会において伊原摩耶花が河内亜也子の意外な一面を知って動揺しながら、あらためて自身の才能を見詰める苦悩の話を経て、神山高等学校文化祭(カンヤ祭)の三日目(最終日)、福部里志が他の大勢の探偵志願者とともにグローバルアクトクラブに張り込んでいた間に、なぜか軽音部で弦が盗まれる事件が発生し、怪盗十文字の法則性に疑惑が生じる話まで。
文化祭の初日の朝から徐々に進行していた怪盗十文字の事件が、ついに表面化。しかも壁新聞部までも被害者になったところへ、千反田えるを通して折木奉太郎の推理を聴かされ、遠垣内将司がそれを盛大な報道に結び付けた結果、今や全校生徒が事件を知るに至った。ただでさえ盛り上がっていた文化祭は今、もう一つ異様な要素を得て新たな盛り上がりを見せ始めた。
この間の面白いことの一つは、遠垣内将司が折木奉太郎の名に複雑な感情を持ちながらもその推理には全幅の信頼を寄せてもいるところ。そうだろう。遠垣内将司は折木奉太郎の推理によって酷い目に遭ったが、反面、折木奉太郎の温情によって救われてもいたのだ。遠垣内将司が折木奉太郎の推理を高く評価していたことは、入須冬実の言(第五巻)において明らかにされていた。