仮面ライダー電王第六話

テレビ朝日系。“スーパーヒーロータイム”「仮面ライダー電王」。主演:佐藤健。脚本:小林靖子。監督:坂本太郎。第六話「サギ師の品格」。
今週も面白かったが、色々な意味で面白かったのは「サギ師の品格」という題。この題が人気ドラマ「ハケンの品格」に基づくのは云うまでもない。題にある「サギ師」とはウラタロス(声:遊佐浩二)のこと。モモタロス(声:関俊彦)が乱暴者であるのに対し、ウラタロスは巧言と色気で女も男も虜にしてしまえる嘘吐き野郎。そんなウラタロスがモモタロスと同じく野上良太郎佐藤健)の闘いのため己の力を尽くしたいと決意するに至ったのは、良太郎がウラタロスの嘘に正義を(勝手に一方的に)見出して弁護し、デンライナーから追放しないことを決めたことに感謝したからだった。泳げなくて海の中で溺れていたモモタロス=良太郎にウラタロスが「僕が泳げるのは嘘じゃない」と呼びかけて一緒に闘うことを宣言したのは良太郎の思いに真に動かされたからだ。とはいえ本当に面白いのは、ウラタロスがそのことのゆえに己の嘘を封印したわけではなかったところ。逆に嘘で闘ったのだ。海中に潜った敵イマジンを「この先にとんでもない渦があるって知らないのかな」と騙して、怯んだところを釣り上げたウラタロス。「きさま!卑怯だぞ!」と抗議した敵イマジンに、「よく云われるよ」と軽く応えたのは傑作だった。こうして、嘘吐き野郎にも誇りがあり正義もあることが描かれた。「サギ師の品格」の題に相応しい。
「嘘も方便」の真理がさり気なく描かれたのも見落とせない。ハナ(白鳥百合子)が、何事にも常に率直に真実しか云わないことの強みのゆえか、余りにも強くて怖くて他人を黙らせてしまうのに対し、ウラタロス=良太郎は他人の心を開かせることができるかもしれないからだ。ウラタロスの、人を心地よくさせる小さな嘘と柔らかな口調。それに加えて良太郎の弱々しい風貌。何れもハナの強さとは正反対だが、そうした柔らかさ、弱さ、優しさはそれ自体が力にもなり得るのだ。
デンライナーのオーナー(石丸謙二郎)が良太郎に対し、ウラタロスを追放すべきか否かの判断を迫ったことは、良太郎だけではなくウラタロスに対しても覚悟、決意を迫ることになった。オーナーが良太郎に期待していたのが何れの決断だったのか定かではないが、良太郎は己の思いに誠実な、最善の結論を出したのだろうし、ウラタロスは彼の思いに応えることを決めたのだ。案外オーナーは全て見通していたのかもしれないが、何れにせよ、オーナーは「チケット又はパスがない者は何人たりとも時を超えてはならない」という形式的な規則の厳守を要求し、良太郎は自身のパスをモモタロスともウラタロスとも共有することで形式的に要求に応じた。グラナダTVシャーロック・ホームズ聖典の「修道院屋敷」でワトソン博士は「形式は紳士を作る」と述べた。デンライナーのオーナーもまた紳士なのだ。