渡る世間は鬼ばかり第二十六話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:山崎統司。第八部第二十六話。今宵二時間拡大の特別篇。
野々下加津(宇野なおみ)の悲劇についてはどう見るべきだろうか。自業自得と見ることもできるが、賢明だったと見ることもできるように思われる。菊村サワ(渡辺美佐子)や菊村康史(錦織一清[少年隊])から養子に来るよう求められていたときに折角のその申し出を断り続けておきながら「幸楽」小島家を離れたい都合が生じたとき初めて菊村家の申し出に乗ろうとしたのは余りにも自分勝手な話であり、そうであれば選りにも選って養子になりたい旨を告げるため菊村家を訪ねた日、菊村みのり(熊谷真実)に子ができた事実を知らされたのは自業自得と云わざるを得ない。菊村家と小島家とを天秤にかけるような真似をしたことへの天罰が下ったのだ。とはいえ、もっと早めに小島家を捨てて菊村家の養子になっておけばよかったのか?と考えれば、やはりそういうわけでもないことに気付く。野々下加津は菊村みのりの実の子ではあるが、菊村康史の子ではない。もちろん菊村康史も菊村サワも野々下加津を大いに気に入ってくれてはいるが、それでも菊村みのりが菊村康史の子を生んだとなれば流石に愛の注ぎ方も違ってくるだろう。さらに将来には老舗の高級和菓子店「菊屋」の世継をめぐる問題にまで発展しかねない。そのとき野々下加津は云わば淀殿懐妊時の豊臣秀次のような立場に立たされることだろう。かねてからの申し出を断り続けた結果そうした悲劇を回避し得たことは、むしろ幸いだったと見ることもできるのだ。