土曜ドラマたったひとつの恋第二話

日本テレビ系。土曜ドラマたったひとつの恋」。
脚本:北川悦吏子。音楽:池頼広。主題歌:KAT-TUN「僕らの街で」[作詞&作曲:小田和正]。制作協力:三城。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁。演出:岩本仁志。第二話。
このドラマを観照する上での一つの視座を提案したい。それは同時に、世に流通する自然な見解への一つの異説にもなり得るだろう。
さて、先週から始まったばかりのこのドラマについては一般に「北川ドラマの典型」とか「王道ラヴストーリー」とか「ベタドラマ」とか評され、主演の亀梨和也木村拓哉と比較する見方が多く行われている。確かにそうした見解が自然であるのかもしれないが、この物語の設定をもし二〇〇四年の四月から三ヶ月間にわたり放送されたTBS日曜劇場「オレンジデイズ」と比較、照合するなら異説が成立し得るはずだ。ヒロト亀梨和也)に相当するのは櫂(妻夫木聡)ではなく翔平(成宮寛貴)であると見受けるからだ。実のところ「オレンジデイズ」において最も内容豊かな登場人物は翔平だったと云うことができるが、あのドラマにおいて彼の物語は極度に圧縮され、省略されていた。そのドラマティクな設定の基本を継承しつつ、近年の時事問題の一つ「格差」をそこに組み込んで新たに設定し直し、具体化して詳細化し、拡大し、変奏して全く別の結末へ向けて描き直し展開させるのがこの「たったひとつの恋」物語ではないのか?と考えてみたいわけなのだ。
ところで、「オレンジデイズ」における櫂と沙絵(柴咲コウ)の恋愛ドラマは彼等によって推進されたというよりはむしろ翔平と茜(白石美帆)に負うところ小さくなかったが、このドラマの場合、その力と役割がアユタ(平岡祐太)とユウコ(戸田恵梨香)に備わっているのは明白だ。云わば翔平が二人いるのだ。アユタは冷静な観察者、洞察者ではあるが、反面、意外にも情熱的で、行動的で、野心的でさえある。己の恋心に誠実であると云ってもよい。彼がどのように物語を動かし、同時に己の物語をもどのように拓いてゆくのか、注目してゆかなければならない。
なお、云うまでもないが、今回の劇中で最も注目に値する要素の一つは、ヒロトが病弱な弟のレン(斎藤隆成)に対し、万が一にもレンに危険が生じたら、自身の体を譲ってやる!と約束していたことだ。しかもこの約束を彼は予てから幾度も告げていたらしい。またヒロトはレンを「海賊船の船長」に譬えたが、それではヒロトは何だろうか。多分、ヒロトは己の本職のまま、船の修理工なのだろう。もしレンの海賊船が沈みかけるような事態に至れば、ヒロトは多分、己の生命を賭してでもその船を繕い、守り抜くことだろう。
ちなみに亀梨和也田中聖の所属するアイドル集団KAT-TUNは、二〇〇四年から翌年にかけての冬、「海賊帆」と銘打ったコンサート旅行を挙行したことがあった。その様子を収録したDVD「Live海賊帆」を見ると、舞台上に海賊船が作られ、KAT-TUNの六人は文字通り「宝島」に出てくる海賊船の船長のような、十八世紀風の華麗な格好をしていた。北川悦吏子はそのことを念頭に置いていたに相違ない。
綾瀬はるかに関して云えば、綾瀬はるか史上最も天然自然で魅力的な綾瀬はるかをここに見出し得るのではないかと今宵も感じた。

「たったひとつの恋」o.s.t
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EN L’AIR~1/fのゆらぎシリーズ~KAT-TUN オルゴール作品集