渡る世間は鬼ばかり森光子特別出演二時間特別篇

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:清弘誠。プロデューサー:石井ふく子。第九部第二十六話。
森光子特別出演による秋の二時間スペシャル。
岡倉大吉(宇津井健)の姉であるハワイ在住の大富豪、森山珠子(森光子)が本間長子(藤田朋子)の要請を受けて急遽帰国し、一族の様子をよくよく見届けて懸案事項を解決し、大いに安堵した上でハワイへ戻っていったわけなのだが、驚くべきは、これまでは老いを殆ど感じさせない程に元気で陽気で威勢よい人だったはずの珠子が、今や完全に老け込んでいたことだ。手足は震えて、足元は覚束なく、目元も虚ろ、その表情には生気なく、言葉も不明瞭。人の名前も間違えるが、誰もそれを訂正できない程に、周囲の人々に不安を感じさせないではいない様子。わずか一年の間に何故かくも変わり果てたのか。東山紀之の愛情が足りないのではないか。
小宮怜子(池内淳子)は時々怖い表情を見せるが、そこには特に意味はない。もともとそういう顔なのだ。謎の女とされてきた小宮は、実は大富豪で、かつて珠子とも面識があった。信頼できる人物であることが珠子によって保証されたわけで、そのことは長子にとっては不本意な展開だったわけだが、大吉以外の岡倉家の人々は小宮の正体を知るや小宮への見方を変えていたのが実に卑しい。富豪は善人、貧乏人は悪人というのがこのドラマにおける基本的な道徳観、世界観なのだろうか。
大井精機の社長、大井道隆(武岡淳一)も今や小島勇(角野卓造)の泥酔仲間の一人。他方、小島五月(泉ピン子)は大井家に対する態度において一貫性を欠き過ぎていて、人格としての一貫性さえも感じられなくなる程だ。