二年前のテレヴィドラマ=スクラップ・ティーチャー教師再生における影の少年たち
二〇〇八年十月十一日から十二月十三日まで放映されたテレヴィドラマ「スクラップ・ティーチャー教師再生」全九話の内容については、当時ここで大いに論述し解釈を試みた。少年男子アイドルを主役と脇役に多数配し、教師役にも当時の大人気アイドル俳優を起用した上に主題歌も主役アイドル集団の歌謡曲だったこともあって世間からは軽く見られてしまった感もあるのが残念ではあるが、色々強引な面や甘い点はあったものの、教育における信頼の問題について視聴者に問いかける意義ある物語ではあったと思うし、ことに十二月六日放映の第八話では、幸福と正義との関係をめぐる難問を提起したところに深みがあったと考えている。
しかるに当時の吾が論では物語の解釈を専らにしていた結果、第二の見所とも云うべき少年アイドル衆の魅力について殆ど注目していなかった。とりわけ主人公の久坂秀三郎(中島裕翔)と敵対する不良三人組の沢渡岬(高畑岬)、楠本風磨(菊池風磨)、美濃部健人(中島健人)について当時は一言も触れていなかった。迂闊で不見識なことだった。そこで録画してDVDに保存しておいた全九話の内、第三話、第四話、第六話、第七話、第八話を見直してみた。
三人組の出番の内で最も強く印象に残る場面があるのは、やはり第七話だろう。沢渡岬と上野まりや(西内まりや)との間の云わば「家柄」の差を越えた恋の話だったのだが、同時に、ささやかながら彼に対する楠本風磨と美濃部健人の友情の篤さも描かれたからだ。2年D組の特別授業でキャンプに行く日の朝、色々な騒動もあってなかなか登校してこない岬を、教室の窓から校庭を見詰めて、待ち続けていた風磨と健人の、いかにも心細そうな、寂しそうな表情。岬に対する風磨と健人の思いの深さを、さらには彼等三人の関係と立場をも、あの表情が全て表出し切っていた。
そもそも岬と風磨と健人〔役名と本名が一致しているので、このように書くと何だか複雑な気分にもなるが〕の不良三人組が校内一番の嫌われ者であることは、第三話の、学校裏サイト掲示板の事件において明かされていた。彼等三人が苛めていた久坂秀三郎も少なくとも当初はその余りにも生真面目な姿勢のゆえに教室内で孤立していた様子だったが、実はそれ以上に、岬と風磨と健人の不良三人組こそ校内で孤立していて、それだからこそ彼等三人で結束し、肩を寄せ合うようにしながらも、表面上は尊大に傲慢に、誇り高く振る舞っていたのだと想像される。沢渡岬の不在は、楠本風磨と美濃部健人の心に大きな欠如の感覚を抱かせたろう。そんな顔をしていた。
楠本風磨と美濃部健人の微笑ましいところとしては、沢渡岬の恋が成就したことを心から喜んでいた点も挙げることができる。第八話で、2年D組の皆が期末試験における学級の全科目の平均点を六十点以上に押し上げるべく勉強を重ねていたとき、何時ものように三人で下校しようとしていた沢渡岬は恋人の上野まりやから「図書館で一緒に勉強しよう!」と誘われたが、楠本風磨と美濃部健人は、幸福な様子の二人をまるで自分たちの幸福でもあるかのように楽しそうな顔で見送りつつ、その姿を真似するように手を繋いで一緒に図書館へ付いて行っていた。
このドラマの主題歌は「真夜中のシャドーボーイ」だが、思えば、孤立していた沢渡岬と楠本風磨と美濃部健人の三人の熱い結束は、超人的な高杉東一(山田涼介)と吉田栄太郎(知念侑李)と入江杉蔵(有岡大貴)の三人の鉄の結束とは対極にありながらも類比的な、云わば「影」のようなものだったのだろうか(Boys In Shadow =「B.I.Shadow」)。
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