仮面ライダーオーズ第六話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第六話「お洋服と契約と最強コンボ」。
前回の話を構成した三つの出来事は、(一)「鴻上ファウンデイション会長が、映司とアンクに接触」、(二)「ヤミーの卵が密かに成長を続ける」、(三)「オーズはウヴァのコアメダルを三枚揃えた」。
火野映司(渡部秀)とアンク(三浦涼介)に対して鴻上光生(宇梶剛士)は「メダルシステムを使用させる代償として獲得メダルの七〇%を譲渡せよ」という法外な条件を提起してきたが、これに関しては三つの嘘があった。
(一)鴻上財団から仮面ライダーオーズに提供される「メダルシステム」は殆ど常に自動販売機の形態を取り、コイン投入口にメダルを支払わなければ起動しないかと思われていたが、実際にはメダルの投入とシステムの起動との間には何の関係もなく、起動するか否かは全て鴻上光生の「意思」一つで決まっていた。
(二)しかるに、この「意思」に関しても彼はささやかながら嘘をついたと見ておかなければならない。なぜなら彼は己の生命が絶えたときメダルシステムが永遠に機能しなくなることを表明し、あたかもメダルシステムに生命を与える意思が己の精神そのものであるかのように、換言すれば、あたかも己の精神こそがメダルシステムの神であるかのように語ったのだが、実際には、仮面ライダーオーズの戦闘の現場で監視をする鴻上財団の隊長、後藤慎太郎(君嶋麻耶)がリモートコントロール機でメダルシステムを操作していたからだ。鴻上光生の生命が絶えたとしても、鴻上財団の能力、もっと厳密に云えば、メダルシステムに関連する一切を保守管理する能力が存続する限り、メダルシステムは生き続けると考えられる。
(三)鴻上財団が提示した「七〇%」という条件も実は嘘だった。これが法外な請求であり、アンクが受け入れ得る最大限が「六〇%」までだろうことを鴻上光生自身も解していたのだ。とはいえ「六〇%」というのも法外だ。江戸時代の年貢も設定上は収穫高の五六割であっても実際には二三割で済んでいたらしいのだが、メダルシステムの場合、仮面ライダーオーズとアンクが得る利益も多大であるとはいえ、メダルシステムがなければ(長期の苦戦を強いられるばかりか敗北の可能性も高くなるにせよ)全く戦いようがないわけでもないだろうし、やはり「五〇%」が妥当なところではないだろうか。だからこそ鴻上光生は敢えて最初に「七〇%」の条件を提起して最終的に「六〇%」にまで値下げ交渉をさせるように仕向けたのだ。「値下げ」というのは一見あたかも買手が売手に譲歩を求めているかのようだが、実際には往々買手が売手の法外な条件に自ら納得して受け入れるための儀式にしかならない。
ところで、この物語では人々の欲望が様々な化け物を生んでいる。主人公の仮面ライダーオーズ=火野映司は無欲恬淡の旅人であるから、欲望が悪であるという印象は強まる。だが、欲望は悪ではない。それなくしては愛も美も芸術も知も学も法も正義も、それどころか人生さえも成り立たない(東映バンダイも成り立たないのは云うまでもない)。
だから彼は云ったのだ。「オレ、いろんなとこ行ったけど、何も欲しくない人なんかいないよ」「そう思うのが、生きるのに必要な国もあったし」「大切なのはその“欲しい”っていう気持ちをどうするか」。
これは火野映司自身が何年もの間、世界の様々な地域の人々の生活を目撃して、体験を通して確信したことだったろうが、それを明確化して言語化した契機は、案外、アンクから浴びせられた「おまえがパンツ欲しがるのと一緒だ」という一言ではなかったろうか。