旅行記三/東京国立博物館の東洋館と本館と売店と庭園

出張の最終日ではあるが、移動だけ行えば良い日で、急いで戻る必要はない。
朝七時頃に起きて、いつになくテレヴィを点ければテレビ東京の生放送の番組「おはスタ」に中川大志が出演中。初めて見ることができた。
荷物をまとめて九時頃にホテルを退出し、上野駅の大型コインロッカーへ荷物を預けたあと、先ずは国立西洋美術館の売店で「ラファエロ展」図録を購入し、美術館を出て東京国立博物館へ。東洋館「アジアギャラリー」を見物。
東洋館は永らく閉館していて、その間に改修、改装が行われ、今年の正月に待望の新装開館を果たした。当然ながら建物それ自体は変わっていないので、いくつもの階段を螺旋状に登りつつ、いくつもの踊場と展示室にある様々の展示をめぐるという形式も変わらないが、床や壁の印象は変わったし、何よりも、展示ケースと照明器具が新しく立派になって見易くなった。ただし、かつて東洋館の花形だったはずの古代エジプトガンダーラを目立たない場所に押し込めて、代わりに「中国」(古代には存在しなかったどころか二十世紀まで存在しなかった国名)をやたら強調し、「中国文明」以外の展示物にまでも出土地として「中国」と記載しているのは、古代文明の正しい理解を妨げるだけではないかと危惧する。それに、仏教美術東漸を見せるかのような昔の展示の方が楽しかった。
昼の少し前に東洋館を出て本館へ。二階の各室を一周したあと一階の各室を一周。二階の国宝室には狩野長信筆《花下遊楽図屏風》。宮廷美術室には《竹生島祭礼図》と《堅田図》。《松図屏風》の前で記念写真を撮りたいのでシャッターを押してくれ!と老人氏から依頼されて引き受けた。水墨画室には今年も石室善玖賛《縄衣文殊像》が出ていて楽しめた。伝周文筆《四季山水図屏風》重要文化財にも見入った。屏風室では池大雅筆《西湖春景銭塘観潮図屏風》重要文化財に圧倒された。
書画展開室には板谷桂舟筆《源氏物語図 初音・胡蝶》双幅や住吉具慶筆《徒然草画帖》、狩野伊川院筆《勿来関図》、狩野晴川院筆《源氏物語絵合・胡蝶図屏風》のような物語絵が並んで面白かったが、山水画でも、浦上玉堂筆《穿花渡柳図》や鈴木鵞湖筆《武陵桃源図》、花鳥画でも、尾形乾山筆《桜に春草図》や宋紫石筆《桜下軍鶏図》のような力作が並んだ。近代美術室には塩川文麟筆《嵐山春景》や速水御舟筆《萌芽》、鏑木清方筆《黒髪》四曲屏風一双、中沢弘光筆《霧(裸婦)》、近代工芸室には宮川香山の蟹をはじめ内国勧業博覧会出品の作品群。一階の最後にあった寄贈者顕彰室がなくなって、そこへ地下の売店が移転してきていた。かなり大胆な改装だが、成功だろう。特に図録や書籍は探し易くなった。
本館を出たあと本館の裏にある庭園を見物。一周して桜を眺めたあと、移動販売車の仮設カフェでホットドッグを購入して、桜を観ながら遅めの昼食。庭園を出た時点で二時半頃。そのまま博物館を出て、日本芸術院会館に入りたかったものの、改修工事のため休館していたので、その脇にある上野の森美術館に寄って現代美術展を軽く見物。三時半にはそこを出てJR上野駅へ行き、山手線に乗り、浜松町駅で乗り換えてモノレールで羽田空港へ移動。夕方五時半の便は約十五分遅れて出立。松山空港からはリムジンバスで道後温泉駅前まで戻った。