喰いタン2第七話

日本テレビ系。土曜ドラマ喰いタン2 KUI-TAN 2」。第七話。
原作:寺沢大介(「イブニング」連載/講談社)。脚本:伴一彦。音楽:小西康陽。主題歌:トリオ・ザ・シャキーン「愛しのナポリタン」(ジャニーズ・エンタテイメント)。プロデューサー:次屋尚&山本由緒。協力プロデューサー:(アベクカンパニー)和田豊彦&井下倫子。制作協力:アベクカンパニー。演出:中島悟(アベクカンパニー)。
このドラマの主人公は探偵だが、推理がドラマを導くわけではないし、謎がドラマを形作るとも限らない。しかし今回は稀なことにも一つの謎がドラマの前半を支配した。食いしん坊探偵、略してKUI-TANこと高野聖也(東山紀之)が料理の味を間違えたのは何故か?という謎だ。いかにも、このドラマに相応しい謎であると云わなければならない。そしてさらに面白かったのは、この謎の答えが探偵ドラマにおける謎の答えの一つの典型だったことだ。なぜなら謎は謎ではなかったからだ。真相は極めて単純。高野聖也は料理の味を間違えてはいなかった。間違えていたのは推理ではなく、推理を支える上原弘樹(瀬戸陽一朗)の証言の側だったのだ。しかも彼の間違いの原因は彼の味覚障害の病にあった。それは彼が二年前まで経営していた人気の料理店を急に辞めた原因でもあった。この病を惹起するのは食生活の偏りにあるというから、その点もこのドラマにおける「事件」の真相としては似つかわしいものだったと云える。とはいえ気になるのは、大人気のオムライスを拵えていた優秀な料理人が、どうして偏った食生活を過ごしていたのか?という点だ。彼の食生活の一端を窺わせるのは、彼の現在の生業であるタクシー運転の合間、バナナと水だけの昼食を摂っていた場面。推測するに、彼の料理店が大人気だった頃も、多忙な仕事の合間にそのような食事だけで済ませていたのではないだろうか。生活の健全化の根本が食生活の健全化にあることをよく描いたドラマだったと云えるだろう。
心身の健康を支えるものとして、食うことのほかに体を動かすことも必要であるだろう。今宵のもう一つの主題、金田一少年=かねだはじめ少年(須賀健太)と上原進(松田昴大)の体育の話がそれを描いた。上原進は、高度な身体能力を誇る高野聖也の指導下、スポーツ科学に則した合理的な訓練を受けたのに対し、金田一は野田涼介(森田剛)の指導下、全てを「根性」だけで乗り切ろうとする所謂「体育会系」の無茶な訓練を受けた。二つを比較して何れが秀でているかは一目瞭然だが、何れにせよ、体を動かし鍛えること自体は有益であるし必要だろう。上原進は大いに努力し、金田一は大いに根性を出したが、それでも池田秀利(影山樹生弥)の抜群の身体能力を超えることはできなかったが、それは当然だった。「イケメンの池田」と云われるあの少年も、一見、嫌味な奴ではあったが、ああ見えて陰では日々地道に体を鍛えて己を磨いていたに相違ないのだからだ。
こうして今宵の第七話には、云わば食育と体育との相補性までもが描かれたわけだが、それを説得力あるものにしたのはKUI-TAN高野聖也の圧倒的な身体能力。あたかもブルース・リーの映画の一場面のような戦闘場面は東山紀之が何歳になっても少年隊であり続けることをよく証明した。