仮面ライダー電王第三十三話

テレビ朝日系。「仮面ライダー電王」。長石多可男演出。第三十三回「タイムトラブラー・コハナ」。
変身用カード全てを消費し、闘う能力を喪失した桜井侑斗(中村優一)。
カードの消費と武器の喪失は、同時に、この二〇〇七年に生きる人々の記憶の中に生き残っていたはずの青年「桜井侑斗」の記憶が消去されてしまうということでもあった。記憶の作るこの時間の世界を守るため、人々の記憶の中の己を犠牲にしてでも、闘わなければならない!という強烈な使命感、責任感と、人々の記憶からこれ以上は消えたくない(=この世界から消えてしまいたくはない)という痛切な思い。この凄まじい二律背反こそが恐らくは、彼にとっては将来の義弟でもあると云える野上良太郎佐藤健)に対して、かつて彼の示し続けた苛立ちの原因だったのかもしれない。無論そうであれば八つ当たりでしかないが、人々の記憶の中にしかいなかった失踪した青年「桜井侑斗」よりも多分十歳位も若いと見られるあの少年=桜井侑斗の、余りにも若い心には、この二律背反の突き付ける負担は余りにも重く、耐え切れないものだったはずだ。英雄の悲劇性がここにある。
しかし、変身用カードは全て消費された。カードの枚数がもっと多ければ、もう暫くは闘えたろうが、反面、記憶の中の己をさらに徹底して消去することをも惹起したろう。カードを失ったことで変身する能力、闘う能力を喪失した反面、人々の記憶から消滅してゆく悲しみからも解放された。デネブ(声:大塚芳忠)がそのことで少し安堵していたが、侑斗も、責任を果たせないことを悔しがりつつも、やはり少し安堵していた。傷心の英雄に暫しの安息を。

Action-ZERO 仮面ライダー電王 エンディングテーマ

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