美輪明宏特集

TBS系。「中居正広のキンスマ!波瀾万丈スペシャル!」は今宵、二時間半にわたる美輪明宏特集。大昔、美少年時代の美輪明宏がゲイバーで働いてた頃の、富裕の常連客が親族一同に取り囲まれて「変態」と責められ、その家族会議の途中に席を離れて自害をしていた話には迫力があった。「男も人間、女も人間、人間が人間を愛して何が悪いのか?」という問いかけは明晰だ。あの頃の日本人は皆、悪くもないことを悪いこと、何の罪もない者を国賊と思い込んでしまうような「催眠状態」にあった…という説には、こうした事件を見てきた人の証言として重みがある。その大家族の当主は、己の大切な世継を「変態」と罵り、そこから足を洗わせようとして逆にその大切な世継を永遠に失ってしまった。そのとき「変態」の片棒担ぐ者として会議に同席させられ、敬愛する常連客の苦しみを目撃した若い美輪明宏が、その人を死なせた当主に向かって「ざまあみろ!」と罵ったのは、亡くなったその人が、ゲイバーの青年たちにとって大切である以上に実は彼の父である当主にとってこそ大切だったはずであり、それにもかかわらず当主こそがその人を最も苦しませ、悲しませて死に追いやってしまったのであるという不条理への怒りに動かされたものと云うことができるだろう。本来なら到底あり得ない事態が当たり前のように発生していたのは、人々が皆「催眠状態」にあったことの証明に他ならない。こうした「催眠状態」から人々が覚めつつあることの現れとしてIKKOや假屋崎省吾の躍進を挙げて喜びつつ、同時に美輪明宏は、オカマという蔑称を多用することで己等を卑下するのみか仲間たち皆を再び苦境に陥れかねない有名な「二人のオカマ」を、「あの二人だけは許せない」「消えてしまえ!」と厳しく批判した。杉浦孝昭と杉浦克昭(おすぎとピーコ)のことであるのは明白だろう。中居正広が複雑な表情だったのは無理もない。