ごくせん第二話

日本テレビ系。開局55周年記念番組。土曜ドラマ「ごくせん」。
脚本:江頭美智留。音楽:大島ミチル。主題歌:Aqua Timez「虹」。挿入歌:高木雄也「俺たちの青春」。プロデュース:加藤正俊。制作協力:日テレアックスオン。演出:佐藤東弥。第二話。
このドラマに出てくる赤銅学院3年D組の生徒たちについて吾等視聴者が知り得ることは、現時点までの段階で云えば、実は主人公「ヤンクミ」こと山口久美子(仲間由紀恵)の知り得る範囲を殆ど超えていない。
例えば、風間廉(三浦春馬)がどんな家に住んでいるかを視聴者が知っているのは、先週の第一話においてヤンクミがそこを訪ねたからだ。だが、その家の中がどうなっていて、他に誰が住んでいて、どのような生活をしているのか等については視聴者は未だ知らない。恐らくはヤンクミでさえ知らないからだ。そして学院内の不良連の「頭」の地位をめぐり風間廉と覇を争う関係にある緒方大和(高木雄也Hey! Say! JUMP])については、どんな家に住んでいるのかも知らない。ヤンクミが訪ねていないからだ。このように、ヤンクミでさえ知り得ないことを吾等視聴者が知ることは、今のところ殆どない。逆に云えば、ヤンクミが生徒たちのことを知るに連れて視聴者も彼等のことを知るようになることだろう。
不図想像するに、テレヴィドラマ「ごくせん」制作者の方針として、生徒についてはヤンクミの知り得る程度のことしか明かさないといったようなことが原則として立てられているのではないかと思う。白金学院や黒銀学院でも同じことが云えたような気もする。
さて、今回は風間廉と緒方大和の抗争に関しては重要な展開があった。勝敗を決しなければならないと考えていた緒方に対し、風間はそんなことはどうでもよいと考えていること、緒方が「頭」でも構わないことを云った。もちろん風間廉はもともと明確にそう考えていたわけではないだろう。潜在的にそう考えるところもあったとしても、それを明確に抱くようになったのはヤンクミとの出会いに因るに違いない。重要な変化だ。
しかし風間廉が、配下の市村力哉(中間淳太)と倉木悟(桐山照史)の眼前、緒方大和と配下の本城健吾(石黒英雄)と神谷俊輔(三浦翔平)を相手にその思いを告げた場面をヤンクミは見ていない。ゆえに、この風間廉の変化に関する限り、吾等視聴者はヤンクミの知り得ないことを知っていると云えるかもしれない。とはいえヤンクミは、風間廉にそうした変化のあり得ることを、既に信じていたには相違ないのだ。
今回ヤンクミの知り得たこととして、市村力哉の「仲間」への思いということがあるかもしれない。彼は云ったのだ。風間廉が昔はイジメられていたことを。これは、札付きの不良として今や教師たちにさえも恐れられている風間が本当はどのような少年であるのかを考える上で重要な鍵になる事実だが、同時に、彼の配下として振る舞う市村力哉が内心では彼にどのような思いを抱いているのかを考える上でも重要な鍵になる事実ではないだろうか。市村力哉は、風間廉が昔(小学校時か中学校時か)イジメを受けていたことを知っていて、そして多分、当時から仲間だったろう。市村力哉は、現在の札付きの不良としての風間廉の強さを崇拝しているのではなく強さに屈従しているのでもなく、幼い頃から今までの風間廉の、弱さや悲しみ、苦しみをも全て含めて見守ってきたのではなかったろうか。(もっとも、そう考えると彼がどうして今なお関西の言葉を遣うのか、少々不可解なことになる。彼は何歳まで関西にいて何歳から東京にいるのか。風間廉とは何歳で知り合ったのか。)