ごくせん第三話

日本テレビ系。開局55周年記念番組。土曜ドラマ「ごくせん」。
脚本:横田理恵。音楽:大島ミチル。主題歌:Aqua Timez「虹」。挿入歌:高木雄也「俺たちの青春」。プロデュース:加藤正俊。制作協力:日テレアックスオン。演出:大谷太郎。第三話。
今宵の第三話の中心人物は市村力哉(中間淳太)。街でも評判の悪い赤銅学院に通っている彼と、彼の中学生時代の同級生だった高杉(北条隆博)との間の仲違いや、進学校として評判の青芝高等学校に通っている高杉の密かな悪事をめぐって話が展開した。
とはいえ市村力哉よりも誰よりも、風間廉(三浦春馬)が最も目立っていたと云うべきだろう。なにしろ彼は「ヤンクミ」こと山口久美子(仲間由紀恵)を慕い始めている。学校の教師を慕うのは彼にとっては初めてのことだろう。大人を信頼すること自体、彼には初のことであるのかもしれない。でも、市村力哉が(先週の第二話で)云っていた通り、風間廉は元来が人の心の痛みをよく知る心優しい少年で、しかも彼はヤンクミの思い、その熱さを直に目の当たりにしてきたのだ。変身の条件は充分にあった。
風間廉の心の痛みの少なくとも一端は、市村力哉によって語られたが、今回は市村力哉の痛みが明らかにされた。彼は中学生時代までは街で評判の進学校、青芝中学校に通っていて、そこで高杉とも競い合いつつ、親しくしていたらしい。しかし彼は落ちこぼれて赤銅学院に流れ着いた。その挫折感が市村力哉を無気力な不良少年にしてしまっていた。現状が真に解決されるためには原因が除去されるべきだろう。人生は何時でもやり直せるというヤンクミの言がそれだったのだ。
ところで、今回の話で明らかになったこと。市村力哉は中学生時代には既に東京の青芝中学校に通っていたこと。従って東京に住んでいたこと。他方、彼の親友であり、彼とともに風間廉の配下であり親友でもある倉木悟(桐山照史)は、中学校時代にはどこか別の中学校に通っていて、そのときは市村力哉をまだ知らなかったこと。両名とも関西出身者と思しいが、両名の出会いは赤銅学院高等学校に入学して以降のことだったわけなのだ。そうであれば風間廉の過去について市村力哉が知る(しかも何かしら特権的に)のは一体どのような経緯によるだろうか。誠に考証し甲斐がある。
青芝高等学校に通って優等生を演じつつ陰では悪事を働いていた高杉。演じていた北条隆博は「仮面ライダー剣」でも、最強の優等生ライダーだったはずなのにそのライダー変身能力それ自体の本性によって不良化し、悪の道に迷い込んだ末に、悪者たちからも逆に呆れられ気の毒がられてしまう哀れな少年(=仮面ライダーレンゲル)を演じていた。彼は普通の青年を普通の青年として演じることもできるが、悪を演じるや同情の余地もない稀代の悪者になり切り、視聴者の憎しみをも買うことができる。彼の演じる高杉の救い難い悪さ、憎らしさ加減は、彼に立ち向かう風間廉や市村力哉や倉木悟や、緒方大和(高木雄也Hey! Say! JUMP])や本城健吾(石黒英雄)や神谷俊輔(三浦翔平)を本当に底抜けの「よい子」に見せた。ここでの明確な対比あればこそ勧善懲悪が期待され、ヤンクミの登場が効果的に輝き得るのだ。
高杉一味の暴行の標的にされて負傷した赤銅学院3年D組の四人のうち一人は吉田竜也(若葉竜也)、一人は田中麻聖(中山麻聖)だったろうか。なお、今宵の話には現今話題の「格差社会」が深く影を落としていたのが明白だが、赤銅学院の校医、夏目誠一役を演じる小泉孝太郎の御家族は「ハケンの品格」に続いて果たしてどう見ただろうか。昨年の「ハケンの品格」は大いに楽しんで見ていたらしい元内閣総理大臣閣下だが、渡邉恒雄中曽根康弘御気に入りのこのドラマをも楽しんでおられるのだろうか。