炎神戦隊ゴーオンジャー第十七話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第十七話「正義ノツバサ」。武上純希脚本。渡辺勝也監督。
二週間前の第十五話に登場した天空を翔ける二体の炎神「ウイング族」の「相棒」として、ゴーオンウイングスに変身するゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)とゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)の兄妹がついに姿を現した。強くて賢くて格好よい反面、かなり嫌味な二人組で、ゴーオンジャー五人衆にとっても視聴者にとっても第一印象は最悪。
とはいえ妹の美羽がゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)の朝食を邪魔した場面は、片想い相手の男子に少し意地悪をしてしまう女子の図のように見えなくもなかった。
それにしても両者の生活の対比は泣かせる。大翔と美羽があたかもエーゲ海の島にある白亜の別荘みたいな豪邸で優雅に生活しているとき、ゴーオンジャー五人衆は何時ものようにキャンピングカー「ギンジロー号」で質素な朝食。料理上手のゴーオンブルー香坂連(片岡信和)が玉子料理を作り、他の四人は皿を持って並んで順に取り分けてもらっていた。早いもの勝ちというところが一昔前の喜劇における大家族(例えば漫画「おそ松くん」みたいな)のようだが、順番に並んで料理を取り分けてもらうというのは「配給制度」のようでもあり、ますます貧しさを感じさせて泣かせる。
今朝の配給のときの四人の並びの順番を記しておくと、(1)ゴーオングリーン城範人(碓井将大)、(2)ゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)、(3)ゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)、そして最期に(4)走輔。でも、範人と軍平と早輝の三人だけで料理を全て分けてしまい、走輔の分は残してもらえていなかった。嗚呼。しかし見落としてしまいそうになるが、多分、連の分も残されていなかったのだ。それで連は二人分を(最初の戦闘のあと)追加で作った。そうなるのだったらわざわざ並ばなくてもよいのに…とも思うが、多分、少しでも早く食事にあり付きたいのだろう。物凄い空腹なのか。嗚呼、ますます貧しさを感じさせる。でも、そこがよい。
他方、今回の見所の一として、蛮機族ガイアークの閣僚、害地大臣ヨゴシュタイン(声:梁田清之)と害地副大臣ヒラメキメデス(声:中井和哉)と、彼等の配下、害地目の蛮機獣ハッパバンキ(声:佐藤正治)との三人が、まるで三人組の戦隊であるかのように、揃い踏みで名乗りを上げるという傑作の場面があった。それに先立ちガイアークの居城ヘルガイユ宮殿においては、また何時ものようにヒラメキメデスが、前回の敗者である害水目オイルバンキの失敗を馬鹿にして、害水大臣ケガレシア(及川奈央)を怒らせ、害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)が同僚のケガレシアを宥めるという今や馴染みの殆ど新喜劇的な展開があり、次いで、ヨゴシュタインが「一つ皆に発破をかけるという意味もあり」と云って火薬の化け物ハッパバンキを入場させた。発破をかけるためにハッパバンキを出すという駄洒落に基づく戦略。
もっとも、ハッパバンキ第一回の出陣はゴーオンウイングスの出現によって失敗。そこで再度の出陣に先立ち、ヨゴシュタインとヒラメキメデスとハッパバンキの三名で密かに策略を議していた。その様子を遠くから窺って、ケガレシアとキタネイダスは不快感を隠してはいなかったが、省庁間の対立というよりはむしろ仲間外れにされて寂しがっていただけとも見えた。さて、二度目の出陣の狙いはゴーオンジャーを完全に抹殺すること。そのためにヨゴシュタイン自ら出陣したのだ。
罠にかかって出動して来た正義の若者五人衆の前に現れた害地目三人衆。ヒラメキメデスは「待ってましたよ、ゴーオンジャー。何の策略もなく、おめおめ飛び込んで来てくれましたね」と云い、ヨゴシュタインは「今日で、ゴーオンジャーとの戦いも御仕舞いにするなり!」と宣告して、そして害地目三人衆の名乗りが来た。「大地を汚す憎い奴、害地大臣ヨゴシュタインなり」「ポク・ポク・ピーンと閃くは、害地副大臣ヒラメキメデスです」「害地目一の暴れん坊、ハッパバンキ!ダッパー」「害地目の面目にかけて、お前たちを葬り去る(なり)!」。しかし結論だけを云ってしまえば、ヒラメキメデスのヒラメキによるこの作戦も事実上「何の策略も」なかったに等しい。
今朝の話の結末には苦味があった。山中でハッパバンキに襲われていた四人の登山客が、命の恩人としてゴーオンジャーに感謝を云ったが、実のところゴーオンジャーは、登山客が避難していた間、ヨゴシュタインやヒラメキメデスの攻撃によって身動きも取れない状態になっていただけで、何もできてはいなかった。ハッパバンキを倒したのはゴーオンウイングスだったのだ。無力感を抱いて落ち込んでいたゴーオンジャーを、ゴーオンウイングスは嘲った。しかし見落としてはならないのは、山にハッパバンキが現れて登山客を襲撃しているのを察知したとき、速やかに出動したのはゴーオンジャーであって、彼等よりも先にそれを察知していたはずのゴーオンウイングスではなかったこと。ゴーオンウイングスが出動したのは、ゴーオンジャーの苦戦を見てからのことだったことだ。換言するなら、ゴーオンジャーの速やかな出動がなければ登山客は見殺しにされていたかもしれないということだ。そう考えるなら登山客の命の恩人は確かにゴーオンジャー以外にないのだ。