炎神戦隊ゴーオンジャーGP35

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第三十五話「炎神ノキズナ」。宮下隼一脚本。鈴村展弘監督。
衝撃の展開。この物語に出てくる正義の味方のヒーローたちの中でも、抜きん出て熱く燃える英雄的な魂の持ち主だったゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)が、蛮機族ガイアーク害地大臣ヨゴシュタイン(声:梁田清之)から一騎打ちを挑まれ、仲間たちのことを心配しつつも応戦していた中、不意打ちに遭って、胸にゼンマイのような弾丸を打ち込まれ、致命傷を受け、化石化してしまったのだ。
攻撃から死までの間には時差があった。ヨゴシュタインの攻撃をかわして投げ飛ばし、仲間たちの戦闘に参戦して勝利を得て、仲間たちとの安らぎの場へ戻ろうとしていたとき走輔の動きが止まった。平和な日常生活が戻ろうとしていた只中の出来事だった。ゴーオングリーン城範人(碓井将大)はゴーオンブルー香坂連(片岡信和)とゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)とともにハシャギ合い、今晩の夕食は何にするの?と語り合い、ゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)とゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)は一緒に美味しいプリンでも食べに行こうか?と語り合っていた。ゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)は、何となく何時になく元気のない走輔の肩を叩き、笑顔で疲れを労っていた。団欒の場所であるキャンピングカー「ギンジロー号」へ急ぐ彼等の足取りは軽やかだった。戦い済んだヒーローたちが広々とした公園を進んでゆく様子は、飛び跳ねるように弾んでいて、そのこの上なく快適な速度は芝生の広場の手前にある逆光の樹木を基準にして測られる。だが、その平和な行進の流れは大翔が樹木の影を通過した瞬間に停まった。走輔が立ち止まり、動きを止めたからだ。彼は倒れ、化石化した。かねて走輔に片想いを抱いていた美羽は、この信じ難い事態に悲鳴を上げた。
普段は誰よりも元気だったはずの走輔が、広々とした芝生の公園の真中で全ての動作と表情を失い、直立し、やがて硬直したまま後ろへ倒れていった映像には、何時ものこの番組からは考えられない程の衝撃と恐怖を感じないわけにはゆかなかった。
だが、走輔がこのまま死んでしまうとは思えない。再生があるとすれば、それはどのようにあるのか。見守るしかない。
他方、蛮機族ガイアークにも衝撃の展開。
このところ暴走気味だったヨゴシュタインが、ゴーオン衆によって倒された古代の蛮機族ホロンデルタールの魂を拾い上げ、それと一体化して強大化しようとしていたからだ。まるで、今は亡き害地副大臣ヒラメキメデス(声:中井和哉)の、最期の戦いのときのようではないか。尋常ではない。そもそもホロンデルタール復活にかけるヨゴシュタインの熱意は、同僚の害水大臣ケガレシア(及川奈央)や害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)から見てさえも狂気の沙汰としか思えないようなところがあったのだ。ヨゴシュタインは既にゴーオン衆に対し決戦を挑もうとしているのだろうか。
なお、ヨゴシュタインの本名は「バロン・ヨゴレックス・ド・シュタイン」だそうだ。バロンは「男爵」で、貴族としては下級であるから、それが大臣にまで昇進し得たのは行政官としての能力の高さを物語る。否、むしろ能力の高さを買われて男爵にまで叙任され、平民から貴族へ成り上がったのかもしれない。「シュタイン(Stein)」というのは石、岩石、墓石や記念碑、標石、宝石等、云わば頑丈で変わることのない物の意味だろう。なるほど、古代文明との間には親近性があったのか。