今治城と今治市河野美術館
五連休の二日目。昼一時頃に外出。道後からJR松山駅を経て今治駅へ着いたのは二時頃だったか。今治銀座を経由して徒歩で今治城へ。天守閣にある展示室では今治藩士で画御用をつとめた能島柳川斎典方や今治藩九代藩主久松勝道夫人の文仙久松久子の画を特集していた。文仙の落款を見れば「文」の字の書き方が師の谷文晁の書き方を上手く真似していると見えた。山里櫓の展示室では山本雲渓と沖冠岳の画を特集していたが、改めて観照して、やはり冠岳の巧さには驚かされた。かつて見たときよりも今日は一段とその感を強くした。冠岳のは何れも傑作だったが、ことに素晴らしいと思われるのは「赤壁賦図」一幅における岩肌の色彩の、セザンヌ風とでも形容したくなる知的な軽やかさ。
今治城を出たのは三時半頃だったか。今治港の近くを歩き、今治銀座を経由して今治市河野美術館へ。恒例の日本画展では、土佐光起筆「源平合戦図屏風」(今治市指定有形文化財)をはじめ、同館でしか見ることのできない名品が並んでいた。元賀の水墨山水図三幅対や小林永濯の洋風画、河田小龍の歴史画、鈴木鳴門の墨梅図双幅、山内多門の水墨山水図屏風等、見応えのある作品は多いし、「花と衣装」と題する肉筆浮世絵の特集には企画の面白さがあった。季節の花を描いた画として、花そのものを描いた画ではなく、花の文様をあしらった着物を身にまとう美人たちの画を揃えてあるのだ。花そのものを描いた画の特集もあったが、中で特に目を惹いたのは近藤樵仙の山水図の大幅の三幅。樵仙は杉谷雪樵の門人であるとか。ということは熊本藩御用絵師矢野派の流れに属するわけで、なるほど熊本県立美術館で見た矢野派の画を想起させる画風だと思う。
今治駅へ戻ったのは夜七時の少し前。松山行の特急列車の到着時間まで五十分間もの待ち時間があったので、駅の構内にある二葉食堂で夕食。帰宅したのは九時頃のこと。