ゴッドハンド輝第六話=最終回

TBS系。ドラマ「ゴッドハンド輝」。第六話=最終回。
原作:山本航暉。原案協力:天碕莞爾。脚本:深沢正樹。音楽:池頼広。プロデューサー:遠田孝一&清水真由美。製作:TBS&MMJ。演出:下山天
登場人物が皆それぞれ魅力を発揮し始め、いよいよ今後が楽しみになってきたところで最終回、次週には続かないとは何と理不尽なことだろうか。
特に、真東輝(平岡祐太)と林直行(中林大樹)や岩永修(長谷川朝晴)等との結束、信頼のあるティームワークは見ていて心地よかった。同じ意味で、安田記念病院からKZホスピタルへ転じていた患者からの「S.O.S.」を受けてKZホスピタルへ潜入していた輝が、そこで見殺しにされかけていた子どもを助けるため一人で奮闘していたところへ、安田記念病院からKZホスピタルへ転身していた片岡貢(小林隆)等四人が加わったところもよかった。これら二つの救命と結束の場に続けてさらに畳み掛けるように、近所の工場における爆発事故の被害者たちを助けるため、安田記念病院外科部、通称「ヴァルハラ」の医師たちと看護師たち皆が院長の安田潤司(渡部篤郎)の指揮下に忙しくも的確に動き回った場面が来た。KZホスピタルから戻ってきた片岡等四人に対する安田院長の言葉(「どこでサボってたか知らないが」)も、四人を戻るべくして戻ってきた者として扱っていて絶妙だったと思う。
大仕事を完了して安堵してヴァルハラを去ろうとしていた安田院長を、輝とヴァルハラの皆が引き留めようとしていたところへ現れたKZホスピタルの理事長、ケビン(マイケル富岡)。彼が遂に安田記念病院の息の根を止めようとしたとき現れたのは、ヴァルハラを買い戻すため必要な大金を抱えてきた白馬の騎士、第四話に登場した大富豪の皇稜斗(高嶋政宏)。
ここからケヴィンの転落が始まった。ヴァルハラを解散させるという目的を達成できなかったばかりか、病院の経営方針についても内外からの批判を浴びてしまった彼は、雇い主の四宮蓮(要潤)から解雇を告げられ、そのとき初めて、幼少時に母を亡くしたとき決意したはずの医療への志と現在の己の病院経営との差を自ら省みた。彼には余りにも悲しい過去があったのだ。
ケヴィンの雇い主である四宮蓮にも医師としての良心があることが描かれたし、劇中で最も憎く醜い人物であるケヴィンの、貧乏であることへの憎しみには共感の余地があり得る。その上で、ケヴィンのことを憎しみながらも救出して手術して生命を救った「ゴッドハンド」=輝の、誰であれ患者である限りはその生命を救ってみせる!という信念が、幼少時のケヴィンの決意にも重ねられ得るとすれば、あたかもケヴィンと輝との間に根本的には違いがないかのように見えなくもないだろうか。
だが、富裕の者にのみ最高のサーヴィスを提供して、貧乏な者を自己責任論の下に切り捨て、経営を会計上の収支の問題としてしか捉えないケヴィンの流儀は、ここ十年間の日本を席捲してきた富や利権の一極集中、グローバル化構造改革の一環と見ることもできるわけで、現実にそれが国民の圧倒的多数に支持されていることを思えば、むしろ輝やヴァルハラの流儀こそが時流に取り残された少数派(一年前のテレヴィドラマ「おせん」における壱升庵と同じく「絶滅危惧種」)であり、ケヴィン個人が今後どう転向するかは知らないが、ケヴィンの心を占めていたグローバルな思考と、安田院長や輝の和風の信念とが相容れることはないだろう。
そして多分、多くの視聴者は、輝とケヴィンとの関係、ヴァルハラとKZホスピタルとの関係を、このドラマの主演の平岡祐太と次のドラマ「MR.BRAIN」主演の木村拓哉との関係に重ね合わせて見ざるを得ないことだろう。