仮面ライダーW第四十六話
東映「仮面ライダーW(ダブル)」。
第四十六話「Kが求めたもの/最後の晩餐」。
脚本:三条陸。監督:諸田敏。
左翔太郎(桐山漣)とフィリップ=園咲來人(菅田将暉)の仮面ライダーWは、照井竜(木ノ本嶺浩)の仮面ライダーアクセルと連繋して、秘密結社ミュージアム園咲家の総帥、「恐怖の帝王」こと園咲琉兵衛(寺田農)を遂に打倒した。絶体絶命の危機にあった來人=フィリップを救出したのは左翔太郎による仮面ライダーWへの変身それ自体だったが、この、二人で一人の仮面ライダーへの変身という事態それ自体による事態の打開という展開は、例えば第四話のミリオンコロッセオ事件におけるカード勝負で早くも繰り出されていた云わば彼等の「切り札」であり、実に、この物語の主題の本質の表現でもある。
恐怖のドーパントこと園咲琉兵衛によって恐怖の世界に囚われていた左翔太郎がこの「切り札」に気付いたのは、園咲邸で園咲若菜(飛鳥凛)を神にも等しい「地球の巫女」にする儀式のための生贄にされようとしていたフィリップから、遺言として電話で伝えられた「僕は消えない。君の心に、悪魔と相乗りする勇気がある限り」という謎の言葉によってだった。しかるに、フィリップにこの「切り札」の存在を想起させたのは、來人=フィリップの母シュラウド=園咲文音(声:幸田直子)が園咲家の「最後の晩餐」の席を立つとき來人に与えた「おまえの家族は、もう、園咲ではない。左翔太郎よ。忘れないで、切り札は左翔太郎」という言葉に他ならなかった。
來人の交際相手として左翔太郎を断じて認めようとはしていなかったシュラウドが遂に翔太郎との交際を許したかのようでもあるが、少々意地悪な見方もできなくはない。なぜなら少なくともあの時点では、「二人で一人」の仮面ライダーWに変身するための術も道具も左翔太郎が所有している上、肝心の來人=フィリップも自身の「相棒」としては翔太郎しか認めていない現状にある以上、翔太郎との交際を來人に許すことによってしか來人を救うことはできなかったからだ。しかも、その結果として園咲琉兵衛に対するシュラウドの復讐も果たされたのだ。シュラウドにとっては一石二鳥だったのだ。
問題は、フィリップにとってもシュラウドにとっても、「切り札」になり得る唯一の存在である翔太郎が果たして恐怖の牢獄から脱出できるのかどうかの一点にあったはずだ。多分、フィリップは翔太郎が愛によって恐怖を克服するだろうことに賭けていたのだろう。実際に翔太郎が恐怖を克服し得たのは、むしろ園咲琉兵衛の精神の根底にこそ家族を犠牲にし続けた己の罪の数々を自覚することへの巨大な恐怖心があるという事実を見破ることができたからだったと見なければならないだろうが、思えば、恐怖心のゆえに判断力も行動力も失って震えていた翔太郎が生来の「ハードボイルド探偵」としての才能を取り戻すことができたのは、やはり、フィリップへの愛によってだったと見てよいだろう。