仮面ライダーオーズ第四話
東映「仮面ライダーオーズ/OOO」。
第四話「疑いと写メと救いの手」。
前回の話を構成した三つの出来事は、(一)「泉比奈が、兄の体を使うアンクを目撃」、(二)「食欲を抑えられない男に、ヤミーが寄生」、(三)「オーズとアンクの前に、新たな敵、グリードの一人が現れた」。
火野映司(渡部秀)とアンク(三浦涼介)の前に現れた「新たな敵、グリードの一人」であるカザリ(橋本汰斗)は、アンクに対し、仮面ライダーオーズ=火野映司との連携関係を解消して己と連携するよう提案したが、怜悧なアンクは最初からカザリに警戒感を抱いていたのが明白だ。なぜならアンクは、カザリに対しては決断まで暫しの猶予を要求し、同時に火野映司に対しては互いの関係のあり方について再考を促し、関係を改めてでも関係を続けるよう決断を求めたからだ。しかもカザリに対してアンクが求めた猶予期間は、実はカザリの行動を監視して「申し出」の真意を量るための時間に他ならなかったのだ。
そしてそれ以上に彼は火野映司を捨てることよりも、むしろこの「カザリからの申し出」を交渉材料として出すことによって、火野映司に対して優位に立つことを考えていたのが明白だ。彼は、火野映司と己との関係が相互的で対等である現状にこそ不満を抱いてはいるが、この風変わりな、無欲のゆえの強さのある「人間」火野映司には不満も不信も抱いていない。
とはいえ火野映司も頑固だ。アンクは、かつて火野映司の心配をしてくれた親切な若い刑事、泉信吾(三浦涼介)の身体を乗っ取っている。泉信吾はそのとき瀕死の状態にあったが、アンクに乗っ取られたことで生命を維持できているから、ここにも奇妙な相互関係が生じているのだが、火野映司は何としてでも適切な仕方で泉信吾の身体をアンクから救出し、妹の泉比奈(高田里穂)の許へ帰してやりたいと考えている。だから、アンクが今までと変わらぬ同盟関係の継続を決めた火野映司に対して「価値なしと見たら直ぐにおまえを捨てる」と告げたとき、火野映司は「オレはおまえの隙を見付けて、比奈ちゃんのお兄さんを助ける。おまえを倒しても」と云い返した。
火野映司は、眼前に困っている人がいれば助けずにはいられないが、その感情は仮面ライダーオーズへの変身能力とは直接には関係ない。もちろん変身できれば助け得る人々の規模は何千倍にも何万倍にも増大し得るが、それでもなお「誰もを助けられるわけじゃない」。たとえ変身できなくとも、彼は助けずにはいられない。そのことは第二話で描かれた。だが、泉信吾と泉比奈を助けるためには、アンクの近くに居続けなければならない。仮面ライダーオーズであり続けることの意味と必要性は、彼にとってはその一点にあるとさえ云える。
火野映司はどうしてそこまでして人を助けたいのか。その理由を彼自身が少しだけ語った。己を犠牲にしてでも人々を救出し、泉信吾の身体を救出しようとして走り出そうとした火野映司に、泉比奈が、どうしてそこまで「親切」にしてくれるの?と問いかけたとき、彼は「親切じゃないよ、全然。」「誰もを助けられるわけじゃないしね。」と応えて、そして自身の信念を表現した。「手が届くのに手を伸ばさなかったら、死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。それだけ」。
清い人間を助ける!とか、欲深く汚い人間を助けない!とか、そういう他人への価値判断や好悪の感情を抜きにして、それどころか正義や真理のような一人で見定めるには余りにも大き過ぎる問題も抜きにして、只管、眼前の困っている人、弱っている人を助けたいと願望する火野映司。一見、等身大のヒーローのようでもあるが、凄まじく器の大きなヒーローでもある。